極めるコラム
【羽生農場】秋の害虫対策(イチゴ)
こんにちは。げんき農場羽生です。
イチゴ生産者の方は定植作業が終わり、少し作業が落ち着いている時期かと思います。
気候も良く、活着したイチゴの株が肥大するのにも、良い温度帯を推移します。
その温度帯は害虫にとっても生育しやすい温度でもある為、病害虫に細心の注意を払う必要があります。
今月は秋の害虫管理を中心にお知らせします。
10月の管理ポイント
1.ハダニ対策
30℃を超える日が減少し、25℃前後の温度帯で爆発的に発生が増えます。また、ハダニは乾燥条件を好みますが、10月の日中は晴天率も高く、ハダニにとっては快適な環境と言えます。
早期発見早期散布が基本
病害虫対策の基本であり、今更ですが、発生が確認されれば、即散布で対処します。天敵を導入される方も同様に、出来るだけハダニの密度を下げてから放飼する事で、その後の発生を抑える事が出来るので、やはり、早い対策が、その後の病害虫の発生を抑える事に有効です。
天敵の利用
ハダニの天敵に関して、げんき農場羽生ではチリカブリダニとミヤコカブリダニの導入を予定しています。
今回の導入に先立ち、注意している点を紹介します。
①放飼前にハダニを出来るだけ減らすよう管理を行います。
捕食すべきハダニの数が多いと、捕食する数よりも増殖する数が勝り、うまく防除できません。
②農薬の影響日数に注意します。
育苗期間は出来るだけ残効日数の長い農薬を利用し、本圃で利用したい薬剤を温存している生産者の方が殆どだと思います。
しかし農薬の種類によっては、ロディーやグレーシアなどは天敵に対する残効性が長く、利用には注意を払う必要があります。
③導入時期に注意。
げんき農場羽生では1番花の開花時期、10/20頃に導入予定
ミヤコカブリダニはハダニが少ない時期は花粉を食べて生き残る事が可能です。
この為、開花後に導入する事で、ミヤコカブリダニの餌を確保する事が出来ます。
天敵の効果が出るには、数世代を経て、ハダニの密度を抑える事ができる為、早めの導入が良いようです。
チリカブリダニとミヤコカブリダニの製品
放飼直後の様子、このふすまの中に天敵が入っています。
2.ヨトウムシ対策
複数の生産者の方から、「今年はヨトウムシの発生が多い」という話をお聞きします。
弊社圃場においても、少量ながら発生が確認できたので、今回はヨトウムシの対策も記載致します。
ヨトウムシの特徴
蛾の仲間。幼虫は夜間に活動し、夜の間に葉や茎を食害する為、夜盗虫とよばれています。
基本的に年中発生しますが、実際に農作物に被害を与える程、多く発生するのは、4月から5月、9月から10月の2回です。
これは生育適温の25℃前後で最も活動が盛んになる事に由来しています。
昼間は株と土の間に身を潜めるハスモンヨトウの幼虫
株の茂みに潜み産卵するヨトウムシの成虫
①定植前の土壌混和剤が有効
定植前の対応になりますが、モスピラン粒剤の土壌混和でヨトウムシの飛来を抑える事が出来ます。
イチゴでのモスピランの適応は、アブラムシ類、コガネムシ類幼虫、コナジラミ類になっていますが、実際にはキャベツでのハスモンヨトウの登録があり、イチゴでも忌避効果がありそうです。
定植穴にモスピラン粒剤を混和した様子
②フェロモントラップも有効
メスの臭いでオスのヨトウムシを集め、捕殺します。
メスを集める事は出来ませんが、オスが捕殺されることで、オスの個体数が減る為、メスは受精の機会を失い、イチゴの株に産みつけられる卵は不妊になる確率が高くなり、幼虫の発生を抑制する事が出来ます。
③BT剤の利用
BT剤とは、昆虫にとって有害な毒素(哺乳類には無害)を形成する微生物由来の製剤の事で、微生物の生きた菌あるいは、その微生物が発する毒素を含む資材です。
化学農薬とは違い、微生物の力を利用する事で、抵抗性がつきにくいとされています。また、人体毒性がないのも特徴です。
9月の振り返り
定植の実施
今年は新しいハウスが1棟出来上がり、計2048㎡となり、約12800本の定植をスタートさせました。
9/13より、定植作業を開始。その後、途中中断を挟みつつ、9/23に定植を完了させています。
花芽分化については、埼玉県の農林振興センターに依頼しました。
9月に入り、関東地方では例年にない低温であり、今年の花芽分化は概ね順調に推移しています。
長雨の影響で、ハウス内が多湿になり、炭疽病の発生しやすい環境にある為、今後の管理で注意する必要があります。
定植直後の様子
次回は、
うどん粉病とその対策についてクローズアップします。UV-Bライトの効果についてもお知らせします。