極めるコラム
【羽生農場】うどんこ病対策と過剰訪花の対処(イチゴ)
こんにちは。げんき農場羽生です。
11月は日中と夜間の温度差が大きく、それに伴い、ハウス内湿度の変化も大きい時期です。日中は乾燥し、夜間は多湿になります。
10月に比べ、日平均気温が低い分、害虫の発生リスクは軽減し、高温を好む炭疽病の被害が軽減する中で、うどん粉病にはこの時期、悩まされている生産者も多いのではないでしょうか。
今回は、うどん粉病について、クローズアップして解説致しますので、是非、栽培管理の参考にして下さい。
11月の管理ポイント
1.うどんこ病対策
うどんこ病とは
イチゴの場合、葉、果実、葉柄、果梗、つぼみに発生する糸状菌(かび)
はじめは下葉で赤褐色の斑点が生じ、やがて新葉の裏面に白色の粉状の菌が現れます。
発生は定植直後の高温多湿の時期よりも、温度が低下し始めてから発生が多く、胞子の発芽適温は20℃前後ですが、低温耐候性があり、低い温度に晒される事で、かえって菌が活性化する事が知られています。
これが10月後半から冬の間、うどんこ病が発生し続ける要因です。
胞子は空気中を漂い、植物体に落下したものは発芽して菌糸を生じ、作物に付着すると発芽して菌糸が生じ、菌糸の一部が植物体内に侵入し、養分吸収を行います。
発達した菌糸は菌そうと呼ばれる菌の塊を葉の表面に作ります。この状況がうどんの粉を塗したように見える為、うどんこ病と呼ばれています。
病変は葉以外にも発症します。蕾に発生すると、白い花びらがピンクあるいは赤紫色になります。また、果実に発生した場合は、傷みやすくなり、商品価値が著しく低下します。
うどんこ病ですが、露地ではほとんど発病せず、ハウス栽培やトンネル栽培での発生が殆どです。
うどんこ病の侵入した花びらは紅色になります。
対策
季節的要因が大きく、肥培管理のみでは防除しづらいので、耕種的、物理的、化学的、生物的な防除が不可欠です。
①UV-Bランプの使用
UV-Bとは紫外線の1つで、直接の殺菌効果もありますが、UV-Bを照射する事で、葉の組織が刺激され、丈夫になること事で、うどんこ病の抑制に繋がります。
UV-Bの光は人体にも悪影響を与える為、深夜3時間程度、照射するのが望ましいです。
②硫黄燻煙剤の使用
硫黄燻煙剤を燃やし、締め切ったハウスに充満させ、うどんこ病の殺菌を行います。
ハウスの被覆材によっては使えないものがあります。特に、農ビ、POフィルムなどでは、硫黄燻煙剤不可の製品がありますので、利用する前に、被覆の素材をしっかりと確認するようにして下さい。
③殺菌剤の利用
化学農薬の使用がもっとも一般的な方法ではないでしょうか。
しかしながら、菌も薬剤抵抗性を持つように進化しています。登録があっても効かない場合は、地元の普及センター等に確認し、地域で効いている薬剤を調べるのも良いと思います。
④微生物製剤の利用
一般的に知られているのは納豆菌の種類であるバチルス菌です。微生物には拮抗作用というものがあり、葉の表面にバチルス菌を先に生息させる事で、うどん粉病菌の発生が抑制できます。
また、コナジラミやハダニに効果のあるボーベリア菌においても、うどんこ病への有効性が確認されています。
⑤ケイ酸資材の利用
ケイ酸資材がなぜ?と思われる方もいるかもしれません。
ケイ酸資材は一般に稲のいもち病対策に用いられますが、この作用は「葉を強くする」事で、いもち病が入りにくくしています。イネ科ほどではありませんが、イチゴにおいてもケイ酸の吸収が確認されていますので、予防に有効と言えます。
土耕では土壌中にケイ酸資材を混和すればよいのですが、養液栽培では、水溶性のケイ酸資材を利用する必要がある為、やや高価な対策方法になります。
⑥耕種的防除
うどんこ病は葉が生い茂っている場所で発生しやすいので、定期的に葉かきをする、密植にならない定植距離を保つ事でも、被害は軽減できます。
2.過剰訪花に注意
10月に入り、マルハナバチを導入された方も多いと思います。
自然に受粉を行ってくれる嬉しいパートナーではあるのですが、時にはトラブルも。この時期、気を付けたいのが、過剰訪花です。
過剰訪花とは
働きバチの数に対し、花の数が足りず、何度も何度も同じ花にマルハナバチが訪問し、最終的には奇形果や花落ちを起こしてしまう事をいいます。
こんな花を見かけたら要注意!
対策
飛翔させる時間の制限を行います。
げんき農場羽生では、過剰訪花になりそうな時は、朝1時間程度飛ばして、その後は巣箱の扉を閉めています。また、中1日で飛ばす日、飛ばさない日を設ける事もあります。
この際、重要なのは、巣の中の幼虫を飢えさせない事です。過剰訪花で制限を掛ける際は、特に花粉を十分に与えて下さい。
10月トピック
1.天敵を導入しました。
ハダニ対策として、チリカブリダニ、ミヤコカブリダニの導入を10/25に行いました。
ともに、ハダニを食べてくれますが、繁殖に時間がかかるので、目に見えて効果が分かるのは、暖かくなった3月くらいと予想しています。
チリカブリダニ
2.マルチの展張を行いました。
10月中旬以降、温度の低下と共に地温も低くなります。この為、地温の確保、イチゴの汚れ防止、光の反射効果の観点から、白黒マルチの展張を行いました。
また、白黒マルチは光を吸収しない為、温度上昇が少なく、4月以降の高温対策にも有効な資材です。
次回は、
冬のハウス内の環境制御と肥培管理について、お届けします。
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