極めるコラム
【八街農場】尻腐れ果対策とカルシウムについて(ミニトマト)
関東地方では3月に例年にない早さで桜が咲き、
4月には既に25℃を越える日もでてきました。
例年、高温になるゴールデンウィーク頃から、
尻腐れ果対策に苦慮されている生産者の方もおられますので、
今回は高温期に気になる尻腐れ対策について紹介します。
尻腐れ果の原因
尻腐れ果の原因はカルシウム欠乏です。
いくつかの要因が考えられるためケース別に紹介します。
①灌水不足
カルシウムに限らず、養分はイオンの状態で作物に吸収されます。
灌水量が少ないと、養分供給が足りず尻腐れ果発生の原因になります。
②窒素過剰
生育が栄養成長に偏り、窒素成分を作物が過剰吸収していると、
カルシウムの吸収が阻害されます。
③葉面積の不足
作物の根からの水分吸収量は、葉の蒸散が大きく関わっています。
葉かきを過剰に行うと葉面積が不足し、水分吸収が穏やかになった結果、
カルシウムが実に供給できなくなります。
④根域に関するトラブル
根の展開が不十分な場合やフザリウムの発生等で
根からの吸水する力が弱くなると、萎れが発生します。
合わせて養分の吸収も悪くなるとカルシウムが実に供給されなくなります。
また、根域に十分なカルシウムがある場合でも、高温環境下では、
カルシウムを吸収しにくくなることが知られています。
⑤純粋なカルシウム不足
カルシウムは陽イオンである為、リン酸などの酸と反応し、
水に溶けにくい形状となり作物が吸えなくなる事があります。
対策
まずは灌水を適正に行うことが重要です。
25~28℃の温度帯になると、蒸散量が飛躍的に増加しますので、
作物の状況に合わせた灌水管理が必要になります。
1回あたりの灌水量を増やすよりも、1日の灌水回数を増やし、
作物がいつでも吸いやすい状態を心がけましょう。
また、必要以上に肥料濃度を上げない事も大切です。
過剰な窒素供給がカルシウムの吸収を阻害することもありますが、
肥料濃度を上げることで浸透圧のストレスが加わり、水分吸収の能力が低下します。
作物の生育状況を見ながら急激な濃度上昇は控えましょう。
葉面積に関しては、残し気味の葉かきが大切です。
5月は非常に日差しが強くなりますので、果実の焼け防止の意図もあります。
作業性の観点から過剰に葉かきをしたくなりますが、
1枚余分に残すくらいの気持ちで作業に当たって下さい。
根の活性は、現在に至るまでの栽培管理の影響が大きく、すぐに何か手を打つのは難しいです。
根の状態が良くないと、暑くなるこの時期に萎れが発生しやすくなります。
完全に萎れてしまうと、その後の収穫量にも大きく影響しますので、
過剰にならない範囲で遮光カーテンを有効に使い、萎れを出さない管理を行って下さい。
カルシウムの物理的な供給に関しては、根域からではなく、葉面散布も有効です。
尻腐れ対策としては有機キレートカルシウムを含んだ葉面散布剤がおすすめです。
カルシウムの吸収率を向上させる為、水に馴染みやすい物質と結合させています。
用途に合わせた葉面散布を実施してみて下さい。
次回は、梅雨時期の葉カビ対策についてです。