極めるコラム
【渡辺パイプの営農通信】(トマト)八街編 Vol.4
梅雨時期の病害虫管理
この時期は管理が非常に大変だと思います。曇天が続き農薬散布も満足に行えません。
げんき農場八街でも灰色カビ病・うどん粉病・葉カビ病が発生し、コナジラミも多く発生しています。
湿気が多いと糸状菌としては好環境な場合が多いですが、うどん粉病はどちらかというと乾燥を好みます。
それでも発生が増加するのは以下の理由が挙げられます。
- 曇天によるトマトの軟弱徒長・栽培後期のため樹勢低下。
- 高温により水分と窒素の吸収が多いため。※糸状菌の栄養源は植物体内の窒素分
- 分子が大きい成分は吸収されにくく、不足することで細胞壁が軟弱になり菌糸が侵入しやすい。
現状の対策として
- 【渡辺パイプの営農通信】(トマト)八街編 Vol.2でもお伝えしました、炭水化物を施用し窒素を代謝させる方法
- カルシウム剤やケイ酸資材を活用する方法
- 残効性の高い農薬を使用する。
- 殺菌剤なら炭酸水素カリウム、予防剤ならバチルス菌など回数無制限の農薬を使用する。(途中でやめても問題ないので、扱いやすい。)
などの対策をとっております。
やはりトマトの体内窒素量のコントロールと病原菌の密度を減らす管理が肝だと言えます。
窒素優勢で大きく広がった軟弱な葉。全体に一気に葉カビ病が拡がっています。
炭水化物の施用(前月続き)
4月は炭水化物の葉面散布として酢酸カルシウムを使用しました。
加えて根圏からの炭水化物補給も有効と判断し、施用しています。
判断理由としては、炭水化物やたんぱく質(アミノ酸)は根から直接吸収される・されないの議論が行われて
いる時期がありましたが、近年の論文で吸収されると発表されている事、実際に使用していて効果を感じる事
から、有効と判断しました。
根圏からの吸収は葉面よりも多く吸収されますので、効果としては高いと言えます。
げんき農場八街ではクエン酸をpH調整剤の代わりに使用することがあります。炭水化物の供給とリン酸化合物
を溶解しやすくなります。
しかし、こちらも1つ注意点があります。炭水化物は通常養液栽培に使用されている無機物と異なり、有機物であること。
有機物には細菌やバクテリア、藻類が繁殖しやすく点滴チューブやダイアフラム・フィルターなどの詰まりの原因
になります。原水にフザリウムやピシウム菌が混入する場合は病気の原因にもなります。
配管内に有機物が残る状況にしないことと灌水設備の定期的なメンテナンスが必要になりますので使用の際はご注
意ください。
高温での直接的な不稔もありますが、炭水化物の総量が不足していたり窒素優勢で他の成分が欠乏すると、
写真のように花落ちや着果不良、尻腐れを引き起こします。