極めるコラム

【渡辺パイプの営農通信】(いちご)羽生編 Vol.4

月の取り組み

親株育苗を開始しました

イチゴは通常、1年ごとに株を取り替える為、来作の栽培に向けて苗を準備する必要があります。

市販の実取り苗は手間もなく、ありがたい存在ではありますが、経費バランスの中で大きなウエイトを占める為、これを抑制する為に自前で育苗をされる方も多いと思います。

今回はげんき農場羽生での育苗の取り組みを紹介します。

 

イチゴの親苗育苗とは

実取り苗(来作の本圃用の苗)を取る為の育苗を行います。

春から夏にかけて、イチゴは栄養成長に傾く為、ランナーが多く発生します。

このランナーを利用し、親株となる苗を育て、その株から更に新しく出たランナーをポットで受けて発根させます。

その後、ある程度成長した状態のものを切り離して、実取り苗として利用します。

 

げんき農場羽生での取り組み

2021年4月に育苗棟が完成し、この度、ここを活用し、育苗を始めました。

プランターに親株となる苗を定植し、カタツムリポットでランナーを受けます。

 

 

ポットに受ける際は、ある程度、ランナーが発生したタイミングで、ランナーを固定し、灌水を開始します。

受けた直後は培地を乾燥させずに、兎にも角にも発根を促す事が重要です。

ある程度落ち着いてきたら、液肥を入れて潅水を行い、苗の大きさに応じて、潅水量、潅水回数を増やしていきます。

 

6/6現在、本圃場ではプランターの苗に肥料濃度をEC0.5、潅水回数を4回で管理を実施しています。

※改正種苗法の観点から、親株育苗して良い品種なのか、十分に確認が必要です。

 

②ケイ酸投入によるイチゴの品質維持(続報)

前回までの発表で、市販の液体ケイ酸資材の有効な使い方として、低濃度、多頻度施用を推奨してきました。

しかし、市販の液体ケイ酸資材はとても高価であることから、安価である水稲用シリカゲルを利用できないか検討してみました。

 

まず初めに、予備試験として以下の方法を試みました。

①シリカゲル200gをバケツ内で水に溶かす。

予備試験では、溶かし始めた直後はパチパチと音を立てながら、溶解しますが、溶出するのは全体の2割程度であり、残りのシリカゲルは容易に溶けない事とわかりました。

 

  • この事から、シリカゲルを水切りネットに入れて、原水タンクに浸ける方法に変更しました。

 

2週間が経過しても約50%が溶け残っている状況ですが、イチゴの軟化防止効果は実感できました。しかしながら、液体ケイ酸資材と比べると効果が薄いように感じました。

どのくらいの量を溶かせば良いのか、まだ手探りの状況ですが、次作の栽培の中で明らかにしていきたいと思います。

 

月の管理ポイント

① 病害虫に引き続き注意

 既に栽培を終了されている方も多いと思いますが、栽培を引っ張る場合は、引き続き病害虫への注意が必要です。

梅雨時期は多湿になる為、湿度を嫌うハダニが減少する(減少すると言っても5月ほど増えない程度)反面、糸状菌が発生しやすくなります。とりわけ灰色カビ病の発生には注意が必要です。

 

 灰色カビ病

  発生温度は20℃前後ですが、多湿条件で発病しやすいです。発生初期は比較的、果実のがく部分に発生が

見られますが、特に老化葉、枯死葉、地際の古い葉柄などで繁殖します。

この為、こまめな葉かきを行い、古い葉はできるだけ除去し、常に風通しを良くしておくことで、ある程度の被害が抑えられます。

また、植物内での窒素濃度が高い場合も発生しやすくなるので、多肥にならないよう、過潅水にならない管理も重要です。

7月号は育苗特集を予定しています。

次号も楽しみにして頂けると幸いです。