極めるコラム

【渡辺パイプの営農通信】(いちご)羽生編 Vol.5

月の取り組み

ランナー育苗を開始しました。

ランナー育苗とは、プランターなどで育てた親苗からランナーを発生させ、発生したランナーをポットに受けて、次作の実取り苗を育てる方法です。

育苗後半は複数のランナーが込み合い、整理が大変が大変ですが、親株から栄養分や水を受けられるので成功率の高いやり方です。

また、農薬のカウントは切り離し完了までは前作のカウントとなる為、農薬管理の観点からも有利です。

げんき農場羽生ではカタツムリポットを使うやり方を採用しました。

潅水ムラが発生する事、ランナーが都合のよいポジションに出てくれないといった事ともありますが、

底面給水よりも水の切れが良く、水媒する炭疽病のリスクが少ない事。また、ポットの底面から根が外に出にくく、定植時に切る根が少なくて済む、すなわち定植初期の活着が良いというメリットがあります。

月の管理ポイント

親株の肥料切れに注意

親株に複数のランナーを出させる為には、親株を大きく育てる必要があります。

しかし、肥料濃度を高くすると、小さな苗では濃度障害(いわゆる肥料焼け)が生じやすく、窒素過多による病害虫被害も発生も懸念されます。

濃度障害の観点から親株と子株の養液管理を同じ肥料濃度で管理をする場合は、肥料濃度の低い子株側に合わせる必要があります。

この時、養液の濃度が低いと、単に窒素不足になるだけではなく、微量要素も不足しやすくなり、肥料の要求量の大きい親株に欠乏症が生じやすくなります。

有効な対策方法としては、微量要素を含んだ肥料を置き肥、または葉面散布を行うことです。ランナーをたくさん出したい場合は、やはり早めの対処が重要です。

欠乏症の出た親株

炭疽病には最大の警戒を

炭疽病は30℃以上の高温条件下で発症しやすく、水を通じて媒介する事が知られています。

この為、特に夏時期は、潅水方法や管理方法に工夫が必要です。

 

  • 頭上潅水はできるだけ避ける。

頭上潅水は一度に広い面積の潅水が出来、時間も短くて済むのですが、どうしても泥跳ねが心配です。

また、羅病株からの水滴の跳ね返りも不安要素ですので、可能な限り、株元への潅水をお勧めします。

 

  • 入室時の消毒の徹底

可能な限り、育苗ハウスには靴を履き替えて入るようにしましょう。

履き替えた靴も定期的に次亜塩素酸ナトリウムを利用して消毒を行います。

アルコールを使って手の消毒をこまめに行います。

 

  • 羅病株の除去

羅病の疑いのある株はできるだけ早く除去、もしくは隔離しましょう。

その際、羅病株周辺の株を合わせて処分しましょう。とはいえ、実際には必要株の確保の観点から疑いだけでは処分しにくい場合もあると思います。その場合は隔離を行い、治療薬の散布を実施して下さい。

 

  • 肥料過多にしない

炭疽病のみならず、病害虫全般に言える事ですが、植物体内中の窒素が多い株の方が羅病しやすい事が知られています。この事から、必要以上に窒素肥料を施用しない事が大切です。

 

  • 軟弱徒長させない

徒長株は病気に対して弱い為、徒長させない管理が重要です。夏場はハウス内が高温になる為、遮光を多用すると思いますが、徒長させないよう管理を行って下さい。

 

20年度の栽培を終了しました

昨年9月より初めてのイチゴ栽培を開始しました。

振り返ると、10月にはハスモンヨトウが発生。その後発生したハダニには秋口からずっと悩まされました。

11月下旬からは、かおり野の収穫が始まり、収穫の喜びを噛み締めました。不安の中、漕ぎ出した初めての栽培でしたので、喜びも一入でした。

ハウス内の環境制御に力を注いできたものの、1月には寒波がやってきて2月の収量が激減しました。

懸案になっていたダニ対策は2月に新薬を利用した結果、一気に解消したものの、今度はアザミウマが発生し、この対策にも苦労しました。

3月下旬以降は収穫量との闘いの毎日でした。

販売面では、ECサイト、直売所、スーパーの産直コーナーへの出品を行ってきましたが、収量が多すぎ、いちごが余ってしまい、どこに卸すのかという悩みも経験しました。収穫量が増えているのに収入が増えない。

生産者の皆様なら誰しも経験している悩みにも初めて直面しました。

 

来作の課題は、

収穫量の波を出させない管理

病害虫発生の早期の見極め

厳寒期にもしっかり収量を収穫する環境制御

6tを6.5tにする方法の模索

更なる販売ルートの確立  など

課題は山積みではありますが、試行錯誤を重ね、より良い情報提供をしていきます。