極めるコラム
【八街農場】灰色カビ病の対策と制御設定(ミニトマト)
年が明け、早いもので、トマト栽培も後半戦に突入です。
関東地方では、11月〜12月は晴天日が多く、
比較的、生育が順調な生産者の方が多いとお聞きしております。
その反面、例年同様、年末からの安値相場で、
皆様苦労されているのではないでしょうか。
とはいえ、出荷する作物が無ければ何も始まりませんので、
春に向けて作物を健全に管理する事が大切です。
今回は、灰色カビ病の防除と1月の日中の環境制御(早朝加温)について紹介致します。
灰色カビ病の発生メカニズムと防除、早朝加温の目的
①灰色カビ病とは
作物の葉や茎が傷ついたところから侵入します。
侵食領域が広がり、導管に達すると、根からの養分吸収を妨げやがて枯死させます。
また、果実にも寄生する事があります。
②発生条件と適温
密植、過繁茂による通気性の悪化している場所、
あるいは生育が軟弱な株に寄生しやすいです。
12月~3月に多発しやすく、
早朝の冷え込みの厳しい時期や低温で曇天が続くと発症が多くなります。
20℃の多湿条件で最も活動が活発になります。
③予防
糸状菌の性質として、早い者勝ちというのがあります。
他の菌が占領している領域では、占領している菌が阻害物質を出し、
他の菌が簡単に入り込めないようにする性質です。
この性質を利用して、予め糸状菌資材を散布する事で、
灰色カビ病の発生を抑制することができます。
主な資材としては、ボトキラー、バチスタ―などが挙げられます。
④防除
発生初期は羅病した患部の除去。葉なら葉を取り除く、
茎なら病変した周りを削るなどの方法があります。
削った後、酢酸などを塗布すると、広がりを止める事が出来ます。
ある程度、圃場全体に発生してしまった場合は、殺菌剤による防除を推奨します。
⑤ちょっとしたテクニック
冬の外気が乾いている日、15時ごろに天窓を少しだけ(2~3cm)開けます。
ハウス内の温度が急激に下がらない程度に冷たい風を少し入れ、
作物の蒸散で増えた湿度を抜いてやるのが目的です。
長時間開けるとハウス内温度が下がるので、5~10分程度で閉めて下さい。
これにより早朝の結露が緩和され、灰色カビ病の発生も緩和する事が出来ます。
⑥早朝加温のテクニック
暖房機の変温制御ができる場合、細かい温度管理が有効です。
早朝に細かい温度管理をし、段階的に温度を上げていくことで、
日の出による温度上昇による結露を防止し、
灰色カビが発生しにくい環境を作ることができます。
また同時に、日の出時間に向けて温度を上げる事で、
光合成を促す効果が期待できますし、結露させないことで気孔が開きやすく、
二酸化炭素の吸収や蒸散を促すことができます。
まとめ
来月には、いよいよ寒い中でも光線量が増え始める時期となります。
3月の温度上昇と共に気になるのは、コナジラミ類の発生だと思います。
次回は、コナジラミ類の発生周期と有効な対策、
春の天敵利用について、お伝えします。