極めるコラム
【八街農場】高温・高日射時の管理と梅雨への備え(ミニトマト)
こんにちは。げんき農場 八街農場です。
5月は日射量が増え、ハウス内温度が急激に上昇する時期です。
管理のポイントとしては、高温による消費を抑えつつ、樹勢を維持し、梅雨の低日照に
備える事が重要です。
1.灌水量の調整
5月の日射量は夏並みになりますので、トマトの蒸散量も急激に増えます。
その為、しっかりと灌水することが重要です。
シーズンを通して最も多い灌水量になります。
品種、栽培方法により灌水量は異なりますが、
通常、1株当たり2~3リットル必要だと言われています。
げんき農場八街農場では、ミニトマトの長段栽培を行っていますが、
今作は少し樹勢がおとなしいので、現在は1株当たり1~1.3リットルの灌水を行っています。
さて、灌水量の決定にはもう一つ重要な要素があります。
晴天時は多く与えればよいのですが、雨天や曇天の際は、
晴天時と同じ灌水量では、排液量が増え、肥料代が余分にかかってしまいますし、
なによりも裂果の発生の原因にもなりますので、晴天時との灌水量は変えて管理する必要があります。
写真①:過剰な灌水は裂果を発生させます
日射比例制御がある圃場では、これを有効活用するとよいでしょう。
一例として、
晴天時に日の出から最終灌水時間までに18MJあるとします。
1日の積算日射量の18MJを8回に分けて灌水したい場合
18MJ/8回=2.25MJ/回
1日の灌水量として2リットルを上限とする場合」
2リットル/8回=250ml/回
となります。
実際には朝イチでの灌水を組み込んだりしますので、この上記の通りではありませんが、
雨天、曇天では積算日射量が溜まるのが遅くなりますので、灌水量を減らす事ができます。
2.葉面積の確保
5月は晴れの日も多く、ハウス内は乾燥傾向にありますので、蒸散によって湿度が確保され、
気孔が開くためCO2の取り込みも順調に行われ、増収に繋がります。
そのため、葉枚数はなるべく多く残しておきたいところではありますが、
実際には収穫時の作業性や病害虫の温床にならないことを考えると、
葉をある程度取ることはやむを得ないと思います。
葉面積を確保する事を意識しながら、葉かきをする事で、どこまで取るのが適当なのか、考える必要があります。
八街農場では収穫花房上、1枚ないし2枚まで葉かきを行い、収穫時の作業性を向上させると共に、
農薬が散布しやすくなるようにしています。
葉の展開速度も速くなりますので、当然ながら窒素分が必要となります。
養液栽培で自動管理ができる場合は、冬の管理から徐々にEC値を上げてください。
参考までに、私どもの圃場ではEC1.6⇒2.0程度まで上昇させますが、
これはその時の樹勢や天候によっても異なるので、ご自身の圃場の樹勢など確認しながらEC値は検討してください。
養液コントロールではない圃場では、窒素肥料と合わせて、カリウム分の施肥も行って下さい。
カリウムは果実の結果に結び付くと同時に、作物内での物質交換にも利用されます。
一方で、リン酸については生育後半ではあまり必要ないとされていますので、
特に気にするポイントではないと考えます。
写真②:現在の生育状況
3.遮光カーテンの利用
光合成の為には太陽光は必要ですが、強すぎる光と高温はかえって作物にダメージを与えますので、
温度を気にしながら遮光するようにしています。
八街農場では、10時半以降で28℃を超える場合に遮光を行っています。
筆者としては、30℃まで引っ張っても良いと思っていますが、
中で作業する従業員の体調等も考慮しての温度です。
働いている人がいる現実と、植物生理の間をいかに上手く調整していくかも、管理の醍醐味です。
写真③:遮光カーテンの活用
4.病害虫管理
ジメジメした日が増えるとやはり心配なのが、病害虫の発生です。
梅雨時期は、葉カビは勿論、意外とうどん粉病も増えますし、
雨が続き、気温が低下すると疫病が発生しやすい環境にもなります。
対策としては、ファンを回して、湿度を拡散させる他、
早朝にあえて暖房機を少し稼働させて、朝のハウス内を乾かす方法が有効です。
写真④:葉カビが発生した葉、においを嗅ぐとぬか床のような臭いがします
おわりに
栽培期間がいよいよラスト1ヶ月という生産者の方も多いのではないでしょうか。
げんき農場八街は7月中旬までの栽培を予定しているので、
もうひと踏ん張りというところで、マルハナバチにも、もう少しの間、頑張って貰っている状況です。
さて、次回は、「次作への準備」というテーマで書きたいと思いますので、宜しくお願い致します。
今月もお付き合い頂き、ありがとうございました。