極めるコラム
【羽生農場】ハチの利用・炭酸ガス施用について
こんにちは、げんき農場です。
2023年もあとわずかとなり、本格的に寒い時期になりました。
今年のイチゴは花芽が遅かったので、11月下旬になりようやく咲き揃ってきたと感じています。
マルハナバチやミツバチを導入している方は、既にハウス内で放飼されているかと思います。
今回は、ハチの利用をする際のポイントと、
イチゴを促成するのに効果的な炭酸ガス施用についてご紹介します。
■ハチの利用目的
ハチを飛ばす目的は、イチゴの結実に不可欠な、受粉を促進させることです。
ハウス内の大量にある花ひとつひとつに人力で受粉をするのは現実的ではありません。
したがってミツバチやマルハナバチといった、花粉を食物とする昆虫(送粉昆虫)を
ハウス内に放飼し、受粉を行ってもらいます。
ちなみに送粉昆虫としてハチの他には、ハエやハナアブといった昆虫が知られています。
■ハチの利用のポイント
げんき農場では、「クロマルハナバチ」という種を使用しています。
以下、このハチについてのポイント説明となります。
①ハウスの仕様
ハチは紫外線を頼りに飛翔しますので、紫外線カットのフィルムや資材の利用は避けます。
また、ハウス外への逃亡、鳥類など天敵からの保護のために換気部分には防虫ネットを設置します。
②花数による制限
巣箱を開けっ放しにした場合、1匹のハチが1日に訪れる花数は最大3000花程度なので、
花が少ない状態なら巣箱の出口を閉じて受粉(放花)の制限をします。
花数に比べハチが多すぎると、過剰放花が発生し、奇形果の原因となってしまいます。
特に、花が揃っていない時期や強く摘花を行っている場合は、
巣箱の出口を開けっ放しにしないよう注意しましょう。
過剰放花が起きにくく、十分に受粉できる頭数の目安は、
1aあたり1~2頭という知見もあります(2013,群馬県農業技術センター)。
とはいえ、天候や栽培方法など様々な要素によって全く異なりますので、
花の状態を観察しながら、例えば一定時間経過してから巣箱の出口を閉めるなどして調整しましょう。
③使用期間
最初から巣箱にいるハチの寿命は4週間~6週間程度とされています。
使用開始の日時と、交換目安日を記録しておきましょう。
マルハナバチの活動適温は10~30℃とされています。
したがって、巣箱を覆うようなシェードを設置して日中高温になりすぎないようにし、
夜間は巣箱を毛布でくるむなどして低温対策を取りましょう。
なお炭酸ガス施用をすると、地面に近いほど炭酸ガス濃度が高くなるため、
地面に直置きせず10cmほどの高さの台の上に置きます。
また、砂糖水を入れた補給所を圃場内に設置すると、ハチがより長い期間活動できます。
青か黄色の容器を使うと、ハチが視認しやすいため効果的です。
げんき農場では小型の容器に黄色いフェルトを敷いて、そこに砂糖水を染み込ませています。
④農薬散布の際
マルハナバチにも有害な場合があるので、散布前日にハチを回収し圃場から巣箱を運び出しておきましょう。
また散布後、マルチやシート上の水たまりには農薬が残留している可能性があります。
ハチへの影響日数経過後、水たまりがないかなど圃場内の様子をよく確認してから巣箱を戻しましょう。
■炭酸ガス施用目的と適期
炭酸ガスの施用目的は、光合成効率を高め、より糖度の高いイチゴを安定的に収穫するためです。
また施用の適期ですが、外気温が下がってくると、換気の回数も減ってきます。
したがってハウス内の空気が外に出にくくなるため、11月中旬以降は、炭酸ガス施用の適期と考えられます。
■炭酸ガスの濃度基準
光合成が行われている時は、外気と同等の400〜450ppm程度を保てれば問題ありません。
現在げんき農場では、モニタリングにより光合成促進機G-ACEを制御し、
日の出後光合成が始まるまでは700pm程度、日中は400ppm程度に設定しています。
■高濃度施用
品種差はありますが、炭酸ガス施用により750〜1000ppmまで上げ、
濃度を保つとシーズン中の収量が1〜2割増加する効果があります(2011,福岡県農業総合試験場)。
ちなみに、2000ppmまで上げてもイチゴへの悪影響はありませんが、
以下の点から当農場ではおすすめしておりません。
・1000ppmで育てた場合と比べあまり収量が増えないので、費用対効果が低い。
・ハウス内の炭酸ガス濃度が2000ppmまで上がると、ほとんどの人が不快感やめまい、吐き気を感じる。
新しい知見が出てきましたら、また共有させていただきます!
~さいごに~
ハチによる受粉と炭酸ガス発生機を上手に利用することで、甘くて美味しいイチゴを安定生産し、
より確実に収益増加に繋げましょう!