極めるコラム

【羽生農場】収穫期の温度管理と環境制御設定の流れ(イチゴ)

こんにちは、げんき農場羽生です。

11月は埼玉県では非常に秋晴れが多く、

収穫を目前にしたイチゴの生長を後押ししていいます。

羽生農場では11月17日に「かおり野」の初収穫を迎え、

収穫量が安定する11月下旬より出荷を開始する予定です。

その他の品種についても12月頃から収穫・出荷予定です。

げんき農場のイチゴを楽しみにされている方々のもとに早くお届けできるように

日々栽培管理を行なっております。

                

 

さて、今回の営農通信では収穫が始まり、厳寒期に向けて気温が下がってくるこの時期の温度管理と、

それに合わせた環境制御のコツについて、羽生農場の取り組みを交えてご紹介いたします。

 

◆この時期イチゴの様子

定植から約2ヶ月経ち、草勢も増し水分や養分の吸収が盛んになります。

特に養分を必要とする箇所は花房です。

イチゴは開花に合わせて窒素吸収量が増加するという研究結果もあります(2005齋藤)。

また、葉の大きさを十分に保つためにも多くの養分が必要になってきます。

葉は光合成の場であり、植物のエネルギーの源です。

ここで生成された糖は転流され、果実への貯蔵や、各組織のエネルギーとなります。

 

げんき農場では、日中は光合成適温を維持して光合成を最大化させ、夜間は低温を維持して呼吸量を減らし、

糖の消費を抑える管理を行なっています。

では、この時期の温度管理について、実際の制御設定の流れと共にご紹介いたします。

 

◆コンセプトの決定と現状の環境分析

環境制御を行うときは、まずはご自身がどのような栽培を目指していくか、

栽培のコンセプトを決めましょう。

「生育を促進して、収量を増加させる・・・」「糖度の高い作物をつくる・・・」など

コンセプトに合わせて環境制御は大きく変わってきます。

げんき農場羽生では収量を確保しつつ、

糖度の乗った品質の良い完熟イチゴをつくることを目指しています。

 

コンセプトが決まったら、次は現在の栽培環境がどのような状況なのか、

モニタリング機器を活用して確認しましょう。

朝・昼・夕それぞれの温度推移に着目しどの時間帯に問題があるのか洗い出ししましょう。

ウルトラエースでも時間帯を絞って確認することができます。

 

◆環境制御設定

問題点がわかったら、制御設定を変更していきましょう。

現在、げんき農場羽生では下記を意識して設定を行なっています。

 

朝:早朝加温

日中:光合成適温の維持

夜間:低温管理

 

朝は日の出と共にハウス内の温度が急上昇します。

それにより湿度も急激に低下し、植物が乾燥を感じて気孔を閉じてしまうことがあります。

また、急激な温度の上昇によって、冷えた果実に結露が生じ、

カビを発生させの品質の低下を招きます。

これを防ぐために、日の出前から徐々に加温し、

ハウス内をあらかじめ温めておく早朝加温を実施しています。

 

早朝加温を行う際の暖房機の設定例です。

1時間に1.5℃程度の上昇幅で設定しています。

 

日中は光合成適温である20〜25℃付近を維持させるよう換気制御を行なっています。

ハウス内温度を徐々に上げながら速やかに光合成適温までもっていきます。

 

夜温は低めの温度管理をすることで、呼吸による糖の消費を抑えることができます。

ただし、極端に低くしてしまうと株の矮化などを引き起こしてしまうため注意が必要です。

 

日没後は夜温が8℃を下回らないように暖房機を設定します。

この際、保温カーテンは暖房機が稼働する時間よりも前に閉まるように設定しましょう。

サイドカーテンがある方はそちらも忘れずに!

 

◆変更後の確認

制御設定を変更したら、後日必ずハウス内環境を確認しましょう。

この時チェックするポイントとしては、こちらを参考ください。

・モニタリンググラフの推移が狙い通りか?

・植物の生育の様子はどうか?

・制御機器が思わぬところで動いていないか?

機器の稼働状況はUTNETのモニタリンググラフの「CSVダウンロード」からダウンロードした

エクセルファイルにて確認することができます。

「〇〇運転状況」の列にて「1」は稼働中、「0」は停止中です。

※画像は見やすく加工してあります。

※機器の稼働状況が確認できるのはウルトラエースTシリーズのみになります。

 

大切なことは、モニタリングだけに捉われないことです。

理想的な環境はその土地や毎年の気候、栽培品種、使用しているハウスなどで大きく変わってきます。

日々の栽培の記録や、環境制御設定は記録に残す癖をつけましょう。

自分だけの栽培指南書が出来上がります。

毎回の設定値は記録に残すことで、いつどのような目的で変更したかが一目でわかります。

 

まとめ

毎年異なる環境にどう立ち向かっていくかが作物栽培の醍醐味でもあります。

環境制御は理想の営農活動を行なっていくための一つのツールです。

自動で機器を制御してくれるため非常に便利ですが、その設定を行うのは人の仕事です。

げんき農場でも10日に1度は環境設定について話し合い設定の見直しを行なっています。

一度、環境制御設定をしたからといって満足せず、

しっかり作物や気候と向き合ってより良い栽培を目指していきましょう。

次回は「げんき農場の販売の取り組み」についてご紹介いたします。

 

◆お知らせ

YouTubeチャンネル「スマート農業チャンネル」では、

環境制御などのスマート農業の取り組みについて詳しく紹介しています。

ぜひご覧くださいませ。

スマート農業チャンネルはこちらから↓↓↓

https://youtube.com/playlist?list=PLzT71pT2BuC9gppuP1eu68i4AFfofOXsX

 

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