極めるコラム

【羽生農場】IPMの取り組み〜実践事例の紹介〜(イチゴ)

こんにちは、げんき農場羽生です。

今年は10月初頭まで残暑が続き、平均気温が高かったことで花芽分化の確認が遅かったものの、

10月5日に無事に全ての苗の定植作業が終わりました。

今期は、紅ほっぺ・かおり野・よつぼし・恋みのり・あまりんの全5品種を定植しました。

あまりんの定植は今期が初めてになります。

あまりんは埼玉県のオリジナル品種で糖度が高く、近年非常に人気な品種です。

どれだけ美味しく育てられるか、これからの栽培が楽しみです。

現在の圃場の様子(10月20日撮影)

例年より気温の低下が早く、マルチの展張を始めました。

 

さて、今月の営農通信では、定植後の病害虫・雑草管理が重要になってくる今の時期に合わせて、

羽生農場が日ごろ取り組んでいるIPM(総合的病害虫・雑草管理)について紹介します。

 

IPMとは…

IPMとは利用可能な全ての防除技術(農薬も含む)を検討し、

病害虫・雑草の増加を抑えるために総合的に組み合わせることです。

これにより、人の健康に対するリスクと環境への負荷を軽減することができます。

また、農業を取り巻く生態系のかく乱を可能な限り抑制することにより、

生態系が有する病害虫及び雑草抑制機能を可能な限り活用し、

安全で消費者に信頼される農作物の安定生産を可能にします。

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/kokuji_tuti/tuti/t0000830.html

 

IPMの基本的な実践方法

IPMを実践する際には以下のフローで行います。

では、これら①〜③でイチゴのハウス栽培を行う羽生農場が実践していることを紹介します。

 

【予防的措置】病害虫・雑草の発生しにくい環境の整備

◆防虫ネットの設置:ハウスの開口部(妻面・側面)に取り付けることで、

通気性を保ちながら、害虫の侵入も防止できます。

写真のような赤色の防虫ネットは、白黒でしか物が見えない害虫にとって、

黒い壁のように感じるため、侵入防止効果が高いです。

 

(左)側面換気部

(右)出入り口部・側面換気部

 

◆防草シート敷設:病害虫がすみ着く雑草の生育を防ぐことで侵入を抑制します。

ハウス周り2mだけでも敷設すると害虫の侵入を大きく抑制できます。

 

(左)ハウス周囲に敷設

(右)白いシートは光合成促進効果もあります

 

◆靴の履き替えとアルコール消毒液の設置:ハウス内に菌を持ち込まないように、

土足禁止とし、こまめな消毒を行なっています。

 

(左)ハウス内は土足厳禁

(右)消毒液を携帯し、こまめに消毒します

 

◆前室の設置:栽培圃場に入室する前に部屋を設け、

圃場と外部の環境が直接繋がらないようにすることで病害虫の侵入を抑制します。

 

 

◆化学農薬による予防:定植時に粒剤を土壌混和したり、

病害虫の発生が予想されるタイミングで予防剤を散布して病害虫の発生を抑制します。

 

 

 

◆資材や栽培培地の消毒:資材は次亜塩素酸ナトリウムを使用して消毒します。

培地含めたハウス全体は、栽培終了時にハウス内を密閉し高温にすることで太陽熱消毒を実施します。

(太陽熱消毒についてはこちらから→https://agri-cc.com/column/detail.php?_cid=1548 )

 

判断防除要否及びタイミングの判断

◆日々の朝チェック:栽培状況だけでなく、ハウス本体や機器類に異常がないかチェックします。

環境保全を日々行うことで、病害虫の拡大を抑制できます。

 

毎朝のチェックは欠かさず行なっています

 

◆生育調査による状況観察:定期的に生育調査を行うことで、

イチゴに発生している病害虫を早期に発見できます。

◆例年発生するポイントを入念に捜索する:暖房機の吹き出し口周辺・側面換気の近くなど、

例年病害虫が発生しやすいポイントは日頃から入念にチェック。

発生箇所には目印を立てることで、重点的に防除が行えるようにします。

 

防除多様な手法による防除

◆生物的防除:チリカブリダニやミヤコカブリダニなど害虫の天敵を導入します。

使用できる化学農薬に制限ができてしまいますが、上手に使えば安定して害虫の発生を抑制してくれる効果があります。

天敵導入の様子

 

 

◆物理的防除:粘着トラップを設置することでアブラムシやアザミウマなどの飛翔する害虫を補殺できます。

また、紫外線を照射するUV -Bライトは植物の病害抵抗性を高め、うどん粉病を抑制できることに加え、

ハダニを葉裏に誘導し防除を効率的に行うことができます。

 

(左)粘着トラップ

(右)UV-Bライト

 

 

◆化学的防除:収穫時期や天敵・花粉交配昆虫(ハチ)に影響の少ない農薬の選定しています。

多発箇所には気門封鎖剤のスポット散布を行い、狙ったタイミングや箇所にできる限り少ない回数で対応します。

 

 

まとめ

げんき農場羽生では、消費者の方々に安心してイチゴを楽しんでもらうために、

化学農薬だけに頼らず、環境に配慮したIPM(総合的病害虫・雑草管理)に取り組んでいます。

IPMはあくまでも化学農薬を使わないということではなく、生物的防除や物理的防除も合わせて取り入れながら、

総合的に病害虫を防除していくことを目的としています。

今回取り上げました、げんき農場羽生が行っているIPMをご参考いただき、

皆様の栽培環境に合ったIPMに取り組んでみてはいかがでしょうか。

 

 

 

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