極めるコラム
【八街農場】炭酸同化の促進を意識した環境制御について(ミニトマト)
こんにちは。げんき農場 ⼋街農場です。
日に日に寒くなる11月、関東平野の中でも比較的暖かい千葉県にあるげんき農場八街でも、
暖房機が稼働する時間が長くなってきました。
今年は特に燃料費が高い為、少しでも燃焼時間を減らしたい所ですが、
作物の生育を考えるとそういう訳にもいきません。
であれば、一時的な省エネの観点ではなく、作物に対する効率性を考える方が良いと思います。
すなわち如何にして作物の生育を促進させるか、
それは暖房機を使用するタイミングを見極めることだと考えています。
今回は、炭酸同化の促進をテーマとし、植物に炭水化物の原料である二酸化炭素をいかに吸収させ、
合成された炭水化物の消費をいかに抑えるかについて、お話しさせていただきます。
1.早朝加温
げんき農場八街での事例で紹介させて頂くと、朝の暖房機の温度設定を段階的に上昇させています。
20:00~4:00 12℃
4:00~5:00 13.5℃
5:00~6:00 15℃
6:00~8:00 16.5℃
(11/18現在)
一般的にトマトの光合成適温は25~27℃とされており、
温度が低下するに従い光合成の効率は低下します。
その為、日の出とともに光合成を行わせる為には、
日の出時刻に合わせてハウス内温度を上昇させていく必要があります。
しかし、急激な温度変化は結露の原因になります。
夜間に12℃まで冷えたトマトは、温度を上げてもすぐには温まりません。
特に、果実部分は熱伝導がゆっくりであるため、
温められた空気が冷たい果実に触れると結露を生じます。
(夏に氷水が入ったコップ表面に結露することと同じ現象です)
結露が生じると気孔が開かず、二酸化炭素を吸収、蒸散する能力が低下します。
加えて、灰色カビも生じやすくなります。
そのため、段階的に温度を上昇させることが重要です。
早朝加温で暖房負荷が大きい場合はフル稼働となる時間帯もあります
2.CO2施用
げんき農場八街農場では機器の都合上、時間制御よるCO2施用を実施しています。
8:00~8:30
9:00~15:15(換気開放時は自動で運転停止)
(11/18現在)
概ね400~500ppmで管理できるよう、モニタリングして常に確認する事を心掛けています。
濃度コントロールできる場合は
8:00~15:00くらいの時間帯で下限を400ppm、上限を500ppm程度に設定します。
植物内外でCO2濃度に差をつけることにより、気孔から吸収されやすいと言われています。
暖房機の吸い込み口にCO2発生器の排出口を向ける事で、暖房用のダクトを使用し、
効率的にCO2の拡散を図る事ができます。
3.クイックドロップ
光合成が少なくなる夕方の時間帯に急激に温度を下げ、呼吸を抑え、果実への転流を促進させることを、
クイックドロップと言います。
げんき農場八街農場では、天窓設定を以下のようにしています。
11:00~16:00 26℃
16:00~19:00 14℃
19:00~11:00 25℃
(11/18現在)
日中は光合成適温をキープしつつ施用したCO2が逃げないよう少し高めの温度設定にし、
夕方には一気に温度を下げています。
12℃以下になると暖房機が動作し始めてしまう為、暖房機が動作しているのに、
天窓が開いているという事態にならないよう心掛けます。
11月現在の生育状況
11月は晴天の日が多く、ハウス内の日中温度も25℃前後を確保できている為、生育は順調に進んでいます。
生育を確認するには、生長点をしっかりと見る事です。
細くならず、太すぎもせず、素直に伸びている場合、水分と養分の吸収も順調に進んでいると判断できます。
課題というわけではありませんが、厳寒期に進んでいきますので、樹勢を維持させる為、
農薬散布の際にアミノ酸資材を利用しています。
まとめ
今年は11月に入ってもトマトが高値で取引されており嬉しい反面、
多くの生産者から収穫量が減っていると聞きます。
要因として3段目開花後の着果負担が増える時期に曇天が続いた事が挙げられます。
私たち八街農場も収量は昨年より減少しています。
「10月の曇天のタイミングで窒素を含む資材の葉面散布をしていれば、結果は違ったかもしれない」
と反省しています。
目の前の管理では、11 月以降の晴天を如何にしてうまく利用し、収量を上げていくか、
その温度管理を心掛けます。
次回は、多くの生産者を悩ませる「正月休みの作物管理をどうするか」について掲載します。
出荷先は閉まっているのにどんどん色付いていくトマトは、年明け一気に流通し値段が下がりがちです。
何人かの生産者にインタビューした内容とげんき農場の取り組みとを纏めて掲載しますのでご期待ください。