極めるコラム

【八街農場】厳寒期の換気術(ミニトマト)

こんにちは。げんき農場八街です。

12月に入り、すっかり冬の気候となりました。今年は重油代が高く、温度保持の為に、できるだけ開けたくない。という生産者もおられるのではないでしょうか。

しかし、締め切りにする事で、ハウス内が過湿になり、早朝の結露、灰色カビの発生の原因になる他、トマトの葉に結露が生じる事で気孔が閉じてしまい、収穫量が減る事にもなりかねません。

今回は、厳寒期における換気術を紹介致します。

 

厳寒期の換気術

夕方のクイックドロップでハウス内環境を整える

クイックドロップとは、夕方、日没の30分~1時間前に換気を実施し、ハウス内温度を急激に下げる事をいい、温度を下げる事で、無駄な呼吸を抑えると共に、果実への転流を促進させます。

実は、私がトマトの栽培を始めた1990年代は、暖房機の稼働を減らし、重油の消費を減らすことが、経営改善に繋がると教えられてきました。

現在の管理とは真逆の事を実践してきたわけですが、管理方法が変わっていった経緯がありますので、説明していきます。

転流の考え方の変化

「温度が高い方が転流しやすい」という誤解。確かに温度が高い方が、トマトの活動が活発になる為、光合成でできた炭水化物も移動しやすいのですが、高温でなくても転流は行われる事がわかってきています。

実は転流における物質は、温度が高い場所に集まりやすい事がわかっています。

温度は質量の大きな物では冷めにくく、質量の小さいものでは冷めやすいという性質があります。例えば、ハウス内温度が日没前18℃であったと仮定します。この時、トマトの葉も茎も果実もすべて18℃に近い温度になっています。この状況で冷たい外気をハウス内に取り込むと、質量の小さい葉が冷え始め、続いて茎、質量の大きい果実は一番遅く温度が下がります。

このことにより、クイックドロップを行う事で、果実に炭水化物の転流が集中し、肥大促進、糖度の上昇が行われます。

ハウス内湿度を低下させる

日中、トマトは蒸散を行っており、空気中に大量の水分を放出しています。厳寒期はハウス内温度が22~25℃を超えない日も多い為、換気が行われず、ハウス内に湿度が溜まった状態になります。

関東地方では、冬は比較的、空気が乾燥しています。このため、外気を内気を交換することで、ハウス内の湿度が下がります。

夜間はトマトからの蒸散はほとんどない為、湿度は下がったままの状態がキープされ、朝を迎えるので、早朝の結露予防、多湿が原因となる灰色カビ病の予防にも効果があるというわけです。

作物に直接冷たい空気を当てない

冬場の冷たい乾いた外気を直接植物に当てると、乾燥により葉が壊死する事があります。ハウス内の温度は速やかに下げたいとところではありますが、サイド換気を利用するのはリスクがあります。天窓を上手く使い、作物に直接、外気が掛からないよう換気することを心掛けて下さい。

ハウス内温度は意外とキープされる

日没30分~1時間前に天窓の設定を12℃程度にし、強制換気を行い、換気開始から1時間半程度で換気を辞めると、地温から熱が放出される為、ハウス内温度が急激には低下しません。

具体的なデータはありませんが、クイックドロップを実施した場合としなかった場合を比較し、厳寒期においても稼働時間が30分も変わらないように感じます。暖房経費の上昇率は10%以下に留まるものと推察しています。

この程度の差なら、収穫量の増加、灰色カビ病の薬剤代、農薬散布の手間を考えると十分にペイ出来るのではないでしょうか。

設定の一例

※17時 日の入りの場合

16時20分 天窓 12℃設定

18時    天窓 20℃設定(開かない温度に設定)、暖房12℃設定

 

※地域、ハウスの仕様により、設定は変わってきますので参考として

 

11月の取り組み

隙間に脇芽を伸ばす(増枝)

枝数を増やす目的は大きく3つあります。

①2本になるので収量が増える。

②葉の枚数が増えて光合成が活発になり蒸散するため湿度があがる。

③蒸散した際に根圧が高まり養水分の吸収量が増える。

八街農場では株と株の間が空いている場合は積極的に増枝して光を地面に落とさないように有効利用し、その葉からの蒸散での湿度を乾燥対策とします。

冬期は外気が乾燥しているため日中の換気による乾燥が気孔を閉じさせて、光合成の低下に繋がります。それを防ぐためには蒸散が一番ローコストで加湿できる対策になります。

増枝は適宜行いますが厳寒期に向かうに従い、樹勢の低下や日照量の低下や低温による生育速度の低下がありますので、欠株や誘引の際の隙間は早めに行います。

 

※増枝の基本は伸びた腋芽が十分な光量を確保できる状態であることが前提です。過度の密植は逆に収量を落とし、病害虫のリスクも増加しますので注意が必要です。

 

写真① 欠株した場所への増枝。欠株するとその場所への光は無駄になり、LAI(葉面積指数)も下がります。その結果、蒸散からの湿度も得られなくなり乾燥から気孔が閉じて光合成の低下が起こり悪循環となります。

 

渡辺パイプのらくちん見積もりシステムで理想のハウスを作ってみよう! 渡辺パイプのらくちん見積もりシステムで理想のハウスを作ってみよう!