極めるコラム

【渡辺パイプの営農通信】(トマト)八街編 Vol.5

梅雨時期の裂果

関東は6月14日に梅雨入りしましたが、しばらく晴天が続いたり大雨が急に降ったりで不安定な天気が

続きました。

トマトの様子ですが、作も終盤で樹姿もほっそりとし、葉も小さくなってきています。

 

曇天による日中の光合成量が不足すること、夜温が高いので呼吸による炭水化物の消耗が大きな原因ですが、

気温が高く、根圏には水分が多いのでヒョロヒョロと伸び、葉枚数は展開する為、花房数は増えていきます。

軟弱の為、実の肥大は不十分で、葉質も悪い為、光合成量も減っていき更に樹勢が落ちていきます。

葉が小さくなってくると果実にも影響がでてきます。

梅雨時期のテクニックとしては、日の出後、30分後を目安に炭酸ガス発生装置を稼働させ、600ppm程度まで上昇させると、濃度分散の過程で、気孔から植物体内に取り込まれやすくなります。

この際、サイド換気は閉め、天窓での温度管理にして、二酸化炭素が外部に逃げないようにします。高温期の為、日中は通常通り、サイドも使っての管理となりますので、あくまで早朝の管理となります。

 

これは裂果した実なのですが、夏にみられるタイプの裂果です。

強い日差しが実にあたり日焼けを起こします。そうすると果皮の柔軟性が失われて内部の肥大に耐え切れず着色前に破裂します。

肥大をしなくなってからも荒れた果皮は表面の水分を吸収しやすく降雨や農薬散布、高湿度で容易に裂果してしまいます。

作の終わりの場合はメリハリのある遮光を行うことが一番の対策だと思います。午前中の早い時間帯はしっかり太陽に当て、空気を乾かし、日中は高温対策の為、遮光を行います。

夏越し栽培の場合は樹勢を維持して葉で果実を覆うことにより光合成との両立が可能です。

 

片づけと次作への準備

 

作が終了すると同時に片づけ・次作の定植準備を行います。げんき農場八街ではこのような工程表を作成しています。

年に1作なので作物が植わっているとできないメンテナンスや施工も年に1回しかチャンスがありません。

また、片づけや消毒が不十分だと病気の発生リスクが高まり次作の1年間を棒に振ってしまうことになります。

げんき農場八街では今夏、ハウスのフィルムをキレイに洗浄していく予定です。

その他、施設の大掃除もこの時期の大イベントです。一年間のたまった汚れを落としてハウスもトマトもリフレッシュして次作をスタートしていきます。

 

生産者からの質問

梅雨時期の管理方法として、熊本県の生産者からこんな質問が寄せられましたので、ご紹介します。

Q.

「曇天続きで、軟弱徒長しているので、肥料濃度を上げて、水分ストレスを掛け、徒長を抑える事は可能でしょうか?」

A.

おすすめしません。

水分ストレスという意味では正解かもしれませんが、植物体内の窒素濃度も上昇します。梅雨時期は特にカルシウムの吸収が悪い時期。カルシウムと窒素が過剰だと吸収されにくくなる傾向がある為、植物体内の窒素が増えると益々、カルシウムを吸収しづらくなります。

カルシウム欠乏は尻腐れやあんこ玉の原因になります。

梅雨時期の対策は肥料よりもむしろ栽培空間の環境制御を考えた方が良いでしょう。