農業を学ぶ旅

6月22日 茨城県鉾田氏 株式会社伊藤農園.Fを見学

農業を学ぶ旅 終了レポート

2018年6月22日(金)に開催しましたモデル農場見学会の様子をお伝えいたします。

農場概要

  • 株式会社 伊藤農園.F (農場No.2018-01)
  • 代表取締役:伊藤 健氏
  • 場所:茨城県鉾田市
  • 圃場面積:合計0.6ha (内、ハウス0.6ha)
  • 儲かる農業を実現するためにハウスでの夏越しトマト栽培を実践。ハウス内環境をモニタリングし現状を把握、環境改善に取組むことで売上坪単価5万円を目指しています。また、茨城県第一号のエコファーマーとして減農薬に取り組み、試行錯誤の結果、農薬に頼らない病害虫防除技術を確立。また、徹底した栽培管理で味にこだわるトマトを生産しています。そして、培った技術を若手へ伝える為、研修生受け入れを実施。日々の作業の後1~2時間ほど毎日栽培についての授業を行い、トマト栽培だけでなく、経営面も指導。法人化し組織として若手育成に取り組んでいます。
  • 作業人員:15名(内パート10名)

①

 

見学会の様子

トマト栽培におけるこだわりの土作りと減農薬栽培方法

伊藤農園代表の伊藤さんは代かき還元型太陽熱消毒法の第一人者として有名な方です。代かき還元型太陽熱消毒とは、ハウス内に水を張り、代かきをすることで害虫のセンチュウを予防する消毒法です。代かきする耕うん機もレンコン用のオーダーメイド機器で水の上でも沈まないのが特長。この方法は還元値を測ることにより、科学的に効果が証明されています。通常の代かきでは還元値-160であり、10日で0に戻りますが、伊藤農園の還元値は-200で日数が経ってもこれに近い値をキープしています。還元値-200は生物が生きられない環境で、この消毒法が伊藤さんの安全でおいしいトマト作りに欠かせない技術です。この代かき還元型太陽熱消毒は年に1回、1日しか行わない為。そのやり方を学ぼうと全国から見学者が毎年訪れています。代かき後に耕うんする事で土の粒子がゴロ土状態になり、土の中の酸素の流通がよくなります。その結果、発育に最も重要な根を良好に保つ事ができ、甘いトマトを作るのに適した土となります。さらに長年入れ続けているワラや落ち葉の堆肥を使用する事により、この地に生息する常在菌をハウスの中に取り入れ、病気を減らすことにも繋がっています。

 

代かき還元太陽消毒法 ③

 

安心、安全、おいしいトマト作り

1年を通して常に糖度6~7度のトマトを生産できるようにハウス内環境や灌水管理を徹底しています。よってトマトの生育状態も一年を通してほとんど変わらず、いつ食べても美味しいと感じてもらえるトマトを目指しています。また、通常であれば年間150回ほど消毒を実施しますが、伊藤さんの圃場では年間10回ほど殺菌剤を使うだけです。基本的な防除は自家製木酢とハーブをブレンドした液や納豆液による殺菌など、極論飲むことも出来る、安全な液体を使用しています。今年の目標は殺虫剤や殺菌剤の利用0を目指し、より安全な「いとうさんちのとまと」を出荷し、お客様に笑顔を届けることです。

 

④

 

夏越しトマト栽培に挑戦

夏越しトマト栽培に挑戦しているダッチライト型温室は、伊藤代表と息子さん、研修生の3名で建設したハウスです。

残り少しの被覆工事とカーテン工事になった時、2011年の大震災が起きた。その後は施工業者にも協力してもらい完成させました。自分で建設するのも、栽培中の不測の事態に対応できる様に研修の一環もかねています。伊藤代表の下で学んだ研修生は最初の建設ハウスは自分で施工しています。夏場にトマトをハウス内で育苗~栽培するのは非常に難しく、通常、夏秋トマトは涼しい高冷地で栽培されています。夏にハウス内でトマトを栽培すると、高温のためトマトの樹が弱くなり、花粉の稔性が低下しその結果着果不良を起こします。また果実肥大途中に裂果が発生し、売り物にならなかったりします。伊藤さんの息子さんが栽培を担当しましたが、3年間は失敗の連続でした。その間様々な試行錯誤を繰り返し、栽培5年目から栽培状況も改善。今では坪単価3.5万円の売上があがるようになりました。まだまだ試験研究・改良する余地があるため、売上坪単価5万円も夢ではありません。

 

最初のハウスは自分の手で建設

 

夏越しトマト栽培のメリットと栽培技術

全国的に9~11月はトマトの出荷量が少ないため単価は高くなります。出荷量が少ないという事は栽培が難しいという事です。この時期にトマトを出荷するためには7、8月に着果させる必要があります。この栽培技術が重要なポイントです。また出荷先にとっても「いとうさんちのとまと」ブランドを周年安定供給できる事は大きなメリットの一つです。このため夏越しトマト栽培をする為に様々な栽培技術を活用しています。1つ目はヒートポンプの活用です。補助暖房としてだけではなく、夜冷そして除湿として使用しており、特に夜冷としては夏場のハウス内夜温18℃を目標に設定。外気の影響を防ぐため3重の内張被覆にて保温効果を高めています。2つ目はU字溝に地下水を流し、その冷却気化された外気をダクトと換気扇でハウス内に取り込み、ハウス内温度を低下させる試みを実施。これにより冷房だけでなく除湿やCO2施用の効果があります。

 

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「いとうさんちのとまと」ブランドと販売戦略

出荷量の2/3をスーパーセイミヤチェーンの18店舗へ、出荷量の1/3をとりせんの6店舗へ出荷。一部クイーンズ伊勢丹へも出荷しています。販売戦略として、同じ販売エリアでバッティングしないようにエリアを決めて販売しています。同じエリアで同じものを販売すると価格競争が起こってしまうからです。値段は30年間自分で取り決めています。自分で値段を決める事ができるのは伊藤農園のトマトに力があるからです。1パック500g前後で200~250円/パックで出荷し、店頭でスーパーは25~30%乗せ258~348円程度で販売されています。実際は400~450gのパックですが、伊藤農園のトマトは比重が重いため500gで販売。元々くずトマトを入れるため使用されていたパックですが、それが一番痛まなくて鮮度も保つことができ、さらに手間も省けるので採用しています。スーパーでは年間を通して値幅を作らず、変動させないことで値段も手頃でいつ食べてもおいしいトマトをお客様に提供できるよう心掛けています。

 

いとうさんちのトマト

⑥

 

未来へ向けた活動

全国から見学に訪れる伊藤農園ですが、その多くはリピーターとして2回、3回と訪れます。1回目は栽培などの全体的な話、2回目はその話の要点など、3回目ではより深く掘り下げた話をしています。基本的に99%の事は全て話しますが、残りの1%は研修生にしか教えていません。そんな伊藤代表の教えを請う為、毎年5名ほどの研修生の応募があり、そのなかで面談をして1~2名を採用しています。その際の採用基準として、農業はいかに経営できるかが重要なポイントになる為、社長になれるくらいの能力と意気込みを持った人材しか採用していません。会社勤めが嫌で、農業でもやろうかと軽い気持ちで就農しようとする人は断っています。

 

いばらぎエコ農産物(特別栽培農産物)について

「いとうさんちのとまと」は茨城県が定めた化学肥料や化学合成農薬を削減するなどの厳格な基準を満たした農産物に認証されるいばらぎエコ農産物(特別栽培農産物)の認証を受けています。この認証は県内全70,884戸の農産物販売農家の中から選ばれた755事業者にしか与えられていない信頼性の高い認証で、さらに伊藤農園では届出をした肥料・農薬までも極力使用しない減農薬栽培に取り組んでいます。

 

七

講演会『儲かる農業を実現・継続していくためのチャレンジ!!』

株式会社伊藤農園.Fの今後の事業展開について

夏越し栽培については、まだまだ伸びる要素があります。試験研究を各種メーカーと協力しながら進めて行き、設備投資する事により売上坪単価5万円を目指しています。今後は日中も細霧冷房装置を導入し、温室内の温度を下げ、より品質向上・収量増加につなげたと考えています。また、伊藤農園で修行した卒業生が独立し、各地域で農業を営んでいるため卒業生の農産物も「株式会社伊藤農園.F」ブランドとして「より安心・安全で、より美味しい商品をより多くのご家庭に」の想いを共有し、一丸となって販売していきたいです。

 

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参加者の皆様からのご感想

30代男性

今までの経験に基づいた内容を分かりやすく教えて頂き、大変勉強になりました。農業を始めて5年目ぐらいですが、今回学んだ事で大きく躍進できると確信しています。今後もいろいろとご相談させて頂きたいと思いますので、末永くお付き合いさせて頂きたい。

30代男性

インパクトがあった内容としては、根っこを見るという事が一番印象に残っています。自分で栽培し、研究している中で根を見てみるという概念がありませんでしたが、今回勉強させて頂いた根を見れば作物の事がよく分かる事が改めて理解できました。他にも長年培った研究結果と考察を余すことなく教えて頂き本当にありがとうございました。

30代男性

まだまだ初心者で勉強中の身ですが、今日一日で今まで勉強した1年分以上の価値があったと実感しています。日本海側の気候でどのようにしたらより良い栽培が出来るかを研究していますが、今日学んだ内容で環境をモニタリングし、最適な環境へ導いてあげる手法を早く実践してみたいとわくわくしています。また、懇親会で話題になった根を見るという事ですが、私もアイメック栽培をしているので、フィルムをめくれば根の状態がとてもよく分かります。今日習った根を見るポイントをしっかりと念頭に、自社のトマト栽培に活かしたいと思います。本日はありがとうございました。

40代男性

儲かる農業といえば水耕栽培に走る人が多い中、土耕栽培でここまで儲かる農業を実現されており、すごいと思いました。私自身土耕栽培のほうがトマトの味が良くなると実感しており、今後も美味しい高糖度のトマトを作り、「いとうさんちのとまと」ブランドのよう

にファン作りを行い、消費者を意識した経営、栽培を実践していきたいと思います。

 

当日のスケジュール

伊藤農園スケジュール

 

見学会の様子

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アグリ@カルチャークラブ

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