極めるコラム

【八街農場】定植後の肥培・灌水管理(ミニトマト)

8月に入り、平地での促成栽培の方は、定植を予定している、

あるいは既に完了された方も多いのではないでしょうか。

げんき農場 八街農場は8/5から定植を段階的に開始し、8/9に完了しました。

長期多段取りの作型でありますが、肥培管理に関していえば、いつも悩むポイントです。

トマトは、葉や茎を太らせる栄養生長と花を咲かせ果実を実らせる生殖生長を同時に行いながら、

生育する植物ですので、両方を満足させなければなりません。

栄養生長に偏ると、茎が太くなり、メガネと呼ばれる茎の間に空間を生じ、

酷い場合は生長点が衰退し、芯止まりという症状に陥ります。

同時に花芽も少なくなり、鬼花(花が大きく歪な形状)が発生し、奇形果が出来ます。

逆に生殖生長に偏ると、花芽の数が増えるものの、着果負担が増え、全体に勢いを失い、

肥大不足などが生じ、その後の樹勢の回復に時間がかかります。

栄養生長と生殖生長へ影響を与えるファクターとしては、日射量、昼の温度、日平均温度、

灌水量、肥料濃度などが挙げられます。

今回は定植後の温度管理、灌水、肥料濃度についてお話しします。

 

窒素過剰になると、大きな花が咲き、果形の悪い実を付ける。

また、メガネと呼ばれる異常茎形(写真左)となると、芯止まり(写真右)になる危険性がある。

 

 

1.締めて作るか開放的に伸ばすか

 

定植直後、気候条件が良いと栄養生長に偏り、樹が暴れやすくなります。

養液の肥料濃度を上げると、浸透圧(肥料濃度が濃いと植物は水を吸いにくくなる)の関係で

水分吸収が抑えられる為、生育を抑える事ができ、

生育速度が抑えられるものの、しっかりした苗を作ることができます。

逆に薄い肥料を与えると、トマトは水分が吸収しやすく、素直に生長します。

要するに、生産者の初期成育に対するビジョンによって肥料濃度は変わります。

げんき農場八街の場合、EC0.8から栽培を始めました。

コンセプトとしては、素直に生育させ、早い段階で根量を確保し、

生育のいかなる変化にも対応しやすい樹作りを初期成育の目標としました。

とはいえ、茎が太くなり過ぎないよう、繁茂しすぎないよう、花芽の発生が少なくならないよう、

しっかり作物を観察する必要があります。

この後の管理ですが、3段目の開花期にEC1.6程度まで持っていけるよう、

段階的に肥料濃度を上げていく予定です。

これはトマトの生長とともに、窒素の要求量が増え、また微量要素も必要となる為です。

また3段目の肥大期はもっとも樹に負担がかかる為、根を充実させつつ、窒素量も増やしていくよう、

このような管理を行います。

 

 

 

2.灌水はやや多めに、根には空気も必要

 

締め作りを意識している場合は、この限りではありませんが、げんき農場八街では定植直後の灌水量は

少量多灌水でトータルではやや多めにするようにしています。

結論から言うと灌水ムラが怖いからですが、栽培初期に灌水ムラが生じるとダメージを受けた苗と

順調に育った苗との差が大きくなり、生育差が生じます。

この生育差は誘引作業のしにくさ、収穫のタイミングの違いなどの原因になります。

また、げんき農場八街の培地はロックウールのスラブを使用している為、根域が少なく、

外的要因に左右されやすい特徴があります。

そのため、常に安定した養液で満たしておきたいという考えもあります。

では、常に灌水を流していてもいいのではないかと思われますが、それは違います。

土耕でも同様ですが、植物の根は呼吸をしています。

根は呼吸をしながら、生育し、たくさんの根毛を出します。

この呼吸に大きく関わっているのが気相、要するに培地や土に含まれる空気の存在がとても重要です。

げんき農場八街では、灌水管理は日射比例制御の為、天候にもよりますが、1日4回~5回の灌水を行います。

1回に1株あたり77mlを流しており、1日約300~400mlの灌水を実施しています。

「灌水量が多い」という意見を頂きそうな気もしますが、安心できる量です。

 

 

 

3.温度管理

 

酷暑期であり、日中はサイド、天窓ともに全開で管理を行っています。

それでも、日によってはハウス内の温度は40℃を超える暑さになります。

このような状況では遮光カーテンを利用し、ハウス内の温度を下げ、葉焼けを防止します。

夜間は出来るだけ温度を下げる。

日中が高温、夜間も高温という条件では、節間(葉と葉の間の距離)が伸びます。

背が高いのに葉枚数が少ないというのは、収穫時の1段目の収穫位置が高くなるので、

作業がやりにくくなりますし、木が細くなるので、その後の樹勢コントロールも難しくなります。

その為にも、夜間は換気や循環扇などを積極的に活用し、外気を取り入れ、温度を下げることが大切です。

 

 

4.ホルモン処理

トマトは高温になると、花粉の能力が低下し、実をつけづらくなります。

また、ハウス内が35℃を超えるとマルハナバチの活動も極端に低下します。

この為、強制的に着果させる為に、ホルモン処理を実施します。

高温期のホルモン処理ですが、トマトトーンの場合、100倍に薄めて使用し、温度が比較的低い、

午前の早い時間に作業を行います。

また、生長点に掛かるとホルモン障害により、芯止まりや異常茎になる事がありますので、

掛からないよう、手で花を覆うようにして散布を行います。

げんき農場八街では、概ね9月20日くらいまでをホルモン処理の期間とし、

その後はマルハナバチに切り替えます。

手間を考えると早くマルハナバチに切り替えたい所ではありますが、

暑いとマルハナバチの寿命が短いですし、着果不良の懸念もありますので、しばらくは辛抱です。

 

     トマトトーン。夏は100倍、冬は50倍に薄めて使用。

 

 

 

ホルモン処理の時は、手で花を覆い、他の所にホルモン剤が掛からないようにする。

 

 

まとめ

げんき農場八街では、既に新しい作の栽培が始まりました。

千葉県内では、以前はお盆明けに定植する栽培が主流でしたが、

本文でも書かせて頂いたように、栽培時期が多様化しています。

市場価格の低迷が要因となり、いかに高値のタイミングで出荷していくかで作型が少しずつ変化していますが、

酷暑をいかに乗り切り、良い花芽をつける事ができるかがカギになっているように思います。

そのヒントとして、今回の内容が参考になれば幸いです。

 

次回は、収穫開始後の樹勢維持について、お届けします。

         

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