極めるコラム

【八街農場】高EC条件下で起こる問題と対策(ミニトマト)

8月の取り組み

定植

げんき農場八街では8月5日より3日間に分けて約2万株を定植しました。苗の大きさは本葉6.5枚展開の大苗での納品です。次の理由で大苗としています。

①1段目を確実に着果させるため。

②9月下旬~10月の端境期に出荷できるため。

 

①については花芽の質は開花の9~14日前の環境に大きく影響されるそうです。

特に40℃を超える高温では花芽が落ちる可能性が出てきます。苗テラスなど適切な環境であれば安心なので苗屋さんにお任せしています。

この時期の一段目の着果は生育面でも非常に重要で、樹を暴れさせないために生殖成長へ傾かせる栽培をしなければなりません。そのためには結実は必須です。

②端境期(産地リレーの切れ目)は流通量が少なくなり市況は高騰します。市況取引がなくても営業する際には端境期に出荷できることは強みになります。しかし、若苗定植では端境期での収穫に間に合いません。そのため大苗を使用しています。若苗のメリットとして本葉2.5枚など若苗は納品時の送料が大幅に抑えられますので販売スタイルに応じて考えます。

写真1 納品後の仮定植。まずはキューブ内に根を張らせるために7日前後、仮定植を行います。

 

定植後の萎れ

げんき農場八街では原水に井戸水を使用していますが、フザリウム菌が検出されています。フザリウム菌は根腐れや立ち枯れの原因菌の一種です。当農場ではTM-1型の方に発生が多いためTM-2型への切り替えを進めており、同時にトリコデルマ菌の潅注も今年は試験することにしました。※TM-1型・2型(2a型)はウイルス抵抗性遺伝子を表したもので、基本的に穂木と台木は同じ型にする必要があります。

 

トリコデルマ菌は増殖が速く、他の糸状菌に寄生することから土壌病害の予防に繋がるとされています。使用方法も定植前後で希釈・潅注するだけなので簡単です。

写真2 フザリウム菌による根腐れ。茎には気根の発生が多くみられます。気温が下がってくると回復しますが、初期の収量が激減してしまいます。

 

 

定植後の肥培管理

育苗中は4.0mS/cm程度の濃い養液を使用し塩類ストレスをかけている状態のようです。そのため圃場でいきなり薄い養液を与えると樹が暴れてしまうため生育を見ながら徐々に濃度を下げています。

また、ECは濃度なので養液の成分は別の問題です。八街農場も養液組成に関して試行錯誤を繰り返していますが、この時期だけは思い通りにいきません。

写真3 カルシウム欠乏による成長点の焼け。カルシウムは原子量が大きく吸収・移行し辛いため成長点や果実・葉先に欠乏症状が出やすいです。完全に成長点が焼けていれば脇芽を伸ばすしかないのですが、欠乏した原因を解決しないと脇芽も焼けてしまいます。

 

 

写真4 芯どまり。樹勢が強い場合や窒素過多、ホウ素が少ない場合も発生するようです。こうなると脇芽を伸ばすしかありません。誘引の際に全て脇芽をとってしまってから芯どまりに気づく。ということがないように注意します。

写真5 異常茎(メガネ茎)芯どまり同様、窒素過多やホウ素欠乏で発生が多いです。この部分は内部が壊死しており、今後の養水分の流れが悪くなると考えられます。

 

今回の組成ですがアンモニア態窒素はゼロで硝酸態窒素は例年同様に入れています。亜リン酸とカルシウムが多めで締めづくりするイメージで決定しました。

結果として樹勢は抑えられていますがカルシウム欠乏が発生しています。

一番の原因はおそらくECが高いためです。

 

来作の初期組成としてはN/Caの比率をカルシウム寄りに上げて、亜リン酸の量を少し抑えるようにしようと思います。

ECも樹勢をみながらですが、第一果房着果してから下げ始めて第三果房開花時には1.5mS/cm程度まで落としてみようかと考えています。

 

ここからは着果負担がかかってきますが、夜温が下がり環境は良くなります。養分の吸収速度が上がるため、給液だけを見ていると根圏のEC値が低すぎる状態になることも。培地内EC(もしくは排液)もチェックして常に必要な養分が吸収できる養液管理をしていこうと思います。

 

渡辺パイプのらくちん見積もりシステムで理想のハウスを作ってみよう!