極めるコラム

【渡辺パイプの営農通信】(トマト)八街編 Vol.2

  • クイックドロップ

トマトでは「栄養成長」と「生殖成長」のバランスをとり、樹勢の維持をしつつ果実に養分を回して品質や収量を高めなければなりません。

生殖成長は「子孫を残さなければ!!」と思う環境が切り替えスイッチになります。そのため急激な温度変化や根圏ストレスをかけることが該当します。

樹勢が強い場合は積極的に生殖成長への環境制御を行いたいものです。

 

さて、外気温が低い時期の場合は「クイックドロップ」と呼ばれる方法が一番簡単に効果をだせると思います。

午後の暖かな環境から天窓換気を大きく行います。環境制御盤がある場合は12℃程度に設定すると図の矢印部分のように短期間で温度がグッと落ちます。これが「クイックドロップ」です。

果実肥大速度が目に見えて変わるので樹勢を判断しながらコントロールする必要があります。当圃場での急落のタイミングは日没45分程度前、30分程度の間に5℃以上下げています。

※天窓開度が高すぎると低温障害等のリスクがありますので注意です。

 

  • 根腐れ発生

シシリアンルージュで急激な成長点の枯れが発生しました。

 

リン酸欠乏?鉄欠乏?病気?高EC?

色々と考えました。

根が完全に腐っていました。

 

培地水分69%、EC2.1mS/cmと異常値ではないです。

 

結論としては、

以前に前農場長が「ピシウム菌・フザリウム菌が地下水から検出された」と言っていたのを思い出しました。

高温での根腐れや立ち枯れのイメージが強かったのですが、比較的低温化でも繁殖する種類もいることを知り、ピシウム菌による根腐病と判断しました。

対策としては、

まずは灌水量を減らします。そして微量の酸素剤とクエン酸、乳酸菌を潅注しました。

枯死したところを伐採し、脇芽を伸ばして3週間でここまで回復!!

 

根圏も白い根が張ってきました!!

 

他にも培養液自体を殺菌する銀資材や定植前にトリコデルマ菌を先に培地に入れておくことも発生を抑制できるそうです。来作は導入しようと思います。

 

  • 実験・お役立ち情報

八街農場ではこの時期からコナジラミが出てきます。

例年、成虫に効果のある農薬と蛹や卵に効果のある農薬を組み合わせて使用しています。しかし、化学農薬は長段の作型では回数制限が重くのしかかりますし、思ったほど効果が出ない場合も。

そのため化学農薬に代わって気門封鎖剤(デンプンやオイル系)の使用とボーベリア菌やバーティシリウム菌の活用を実験中です。

気門封鎖剤は効いていますが、やはりしっかりかからないと窒息しません。そして量を撒きますのでコストがそれなりにかかります。そこで期待されるのは菌系農薬。

一部のコナジラミの群落に塗布してみた所、

一週間後に菌糸が生えている亡骸を発見できました。

しかし、隣には元気な成虫も確認できました。菌を利用した防除は温度、湿度条件が問われますので、この先も

防除方法を引き続き探していきます。