極めるコラム
【八街農場】生育調査から振り返る!前作の総括(ミニトマト)
〇はじめに
こんにちは。げんき農場八街です。8月に入りまだまだ暑い日が続いております。
熱中症対策をしっかり行っていきましょう。
さて、長期多段栽培の八街農場では、いよいよミニトマトの定植が始まりました。
長いシーズンを完走するには定期的な生育調査を行い、
生育バランスの舵取りを行っていくことが重要です。
今回は、前作のミニトマト栽培に関する総括をご紹介します。
〇総括
◆市場価格と気象条件の推移
まずは2023-2024シーズンの気象条件や市場動向について振り返っていきます。
ⅰ)月別日平均外気温の推移
八街農場の月別日平均外気温を見てみると、2023-2024年シーズンは前年と比べ3月以外の月で
前年以上の温度だったことがわかります。
特に、8~9月は残暑がかなり厳しかったことに加え、
12~2月は昨年より2~3℃高い暖冬でした。
3月は冷え込みが続き、桜の開花が遅れたことも記憶に新しいかと思います。
ⅱ)市場価格
農林水産省日別情報グラフ(青果物)より引用
( https://www.maff.go.jp/j/tokei/syohi/oroshi_kakaku/seika.html )
トマトの市場の値動きについてみていきます。
2023-2024シーズンは9~10月の間に最大1,306円/kgと、前年の約2.3倍まで高騰しました。
理由としては、高温の影響で北海道や熊本などの産地の出荷量が減ったことが考えられます。
一方、暖冬の影響で12~1月は価格が落ち込んだり、
3月の冷え込みにより春先の価格が高騰するなど、
平年より価格の乱高下が激しいシーズンでした。
◆げんき農場 2023-2024シーズンの振り返り
環境制御データや生育調査データから昨シーズンのげんき農場の栽培を振り返っていきます。
ⅰ)環境制御
残暑の影響もあり、10月前半までは平均気温が高い傾向がありました。
11月~4月の期間は最低夜温も12℃ほどを推移しており、
日平均温度も15~17℃と理想的な温度管理ができていました。
4月以降は再び暑くなってきていることがわかります。
ⅱ)生育調査の結果
生育調査の結果について、2品種のデータを見ていきます。
「生長点-開花果房高(生長点と第一開花果房の距離)」は生育バランスを図る指標として
用いられます。
品種にもよりますが、15cmほどの距離であることが適正な生育バランスであり、
15センチを上回ると「栄養生長」、下回ると「生殖生長」に偏っているとされています。
グラフを見ると、赤ミニトマトでは比較的生育バランスは保てていましたが、
シシリアンルージュでは全体的に栄養生長に偏っていたといえます。
「茎径」は生長点下15cmの茎の太さを測定します。
品種によりますが、10mm前後が適正な数値といわれています。
樹勢を判断するための基準として用いられ、太いと樹勢が強く、
細いと樹勢が弱い状態であるとされています。
グラフを見ると、両品種ともシーズン序盤と4月以降の茎径が細いことがわかります。
ⅲ)収量の推移
トータル収量は91tで前年比1.09倍。単収は10.5t/10aでした。
前年と比べると収穫量に波がある結果となりました。
最終の収穫段数は下記の通りです。
赤ミニトマト:平均31.8段
シシリアンルージュ:平均29.7段
◆考察・今後の方針
考察
収量は前年よりも増加していましたが、昨年はシーズン終盤に病害虫の被害が大きく、
収量を落としてしまいました。
2023-2024シーズンは終盤まで病害虫の被害は少なく、
最後まで収穫できたことで収量が増えたと考えます。
しかし、赤ミニ・シシリ両品種で栄養生長に偏っており、終盤は草勢も弱い傾向にありました。
管理温度が高いと早い生育を促し、徒長してしまう傾向があるため、
管理温度の見直しが必要と考えられます。
日較差やクイックドロップの方法について改めて検討していきます。
今後の方針 ~定植以降は生殖生長に~
定植後、9月頃から気温が徐々に低下しますが、着果負担が軽いため栄養生長に偏りやすいです。
活着後は地下部を充実させ、冬の低日射に耐えられる強い樹を作りつつ
しっかりと生殖生長に傾けていきたいです。
9月は(第4果房開花あたりまで)昼間の温度は高めに設定し、適度な水分ストレスにより
根を伸長させ、生殖生長に促します。
日較差(昼温と夜温の差)をつけ、光合成産物の根への転流を促し、根の強化を図ります。
〇最後に
前作の総括を振り返り、管理が上手く行えた点、改善の余地がある点が浮き彫りになってきました。
生育調査で現状を知り、栽培管理で生育バランスの舵取りを迅速に行い、
次作の増収を目指していきましょう。
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