極めるコラム

【八街農場】年末年始の作物管理について(ミニトマト)

早いもので師走となり、今年も残すところわずかとなりました。

この時期、生産者の方から「市場が休みの間、トマトが赤らむのを抑える方法はどうしたらいいか?」

という質問を頂きます。

生産者の皆様も、日々の管理の中で様々な方法を試されている中で、

「それって本当に合っているの?弊害はないの?」という疑問もあるかと思います。

毎年の気候の変化もあるため明確な答えはありませんが、

げんき農場でもその方法について日々探求しています。

その中で今回は、年末年始に行う作物管理の方法のメリットとデメリットを紹介します。

皆様の実情にあった管理の参考にしていただければと思います。

 

年末年始の作物管理

①休暇期間、夜間の温度を1℃下げる。

効果:全体的に生育が遅延し、色づきを遅らせる。

懸念点:瞬間的には明るみを遅らせることはでき、暖房費の削減にも繋がりますが、生長点の生育にも影響が出ます。長期間実施すると、その後の収穫遅延、花芽の減少にも影響が出る事が想定されます。

 

全国の農家に聞いた〜私の管理方法(千葉県内 Iさん)〜

樹勢が弱い、少し樹勢に勢いを付けたい時に、夜温を下げると、

節間が詰まってバランスが取りやすくなります。

 

②休暇期間、日中の天窓の開放温度を2℃下げる

効果日中の温度を下げる事で、色づきを遅らせる。

懸念点:温度を通常よりも下げる事により、光合成適温を下回り、その後の収量やその時期に形成される花芽分化に影響する為、長期に渡って収量減の影響が出る事が想定されます。

 

③休みの2週間前から暖房機の設定を1℃上げる

効果休みに入る2週間前から夜間のハウス内温度を上げる事で、着果している果実の生育を早め、年末の出荷までにある程度、出し切ってしまう。

懸念点:その後の生育への影響が大きいと懸念されます。

日中に作られた炭水化物の転流が高温により促進されますが、その際、日中の温度が長くキープされやすい果実に栄養が集中する為、生長点への養分が不足し、木が細くなってしまう懸念が考えられます。

その結果、その後の花芽がシングル花房になりやすい、酷い場合は花芽が落ちてしまう事も考えられます。

この方法は年2作型でみられ、長期多段栽培では少なくなっています。

 

④そのままの管理

効果特別な管理は行わないことで、樹勢を維持できる。

懸念点:年内最終日(やや早採り)と年明け初日の収量が多くなり、作業が忙しくなります。

また、日数を置く為、裂果の発生の懸念もあります。一時的に収穫量が増える事で、選果場の能力を上回る量が収穫され、数日に渡ってトマトの供給が増大し、市場価格の低下を招く事が懸念されます。

 

全国の農家に聞いた〜私の管理方法〜

①(茨城県 Iさん)

トマトは人間の都合で生育しているわけじゃないので、ある程度、人間が都合を付ける必要がある。

裂果が発生しそうなら休みの途中で1回収穫する事で、裂果は回避できる。

この時期のトマトは保存が効くので、市場が明けてからの出荷でも問題なし。

 

②(熊本県 Mさん)

共同選果場が1月3日から開くので、1月2日には最初の収穫を実施しています。

なので、年末年始を意識して管理した事はありません。産地の強みですね。

 

まとめ

生産者の方からヒアリングさせて頂いた感覚では、産地では「そのまま」という方が多く、

個人で出荷された方ほど、年末年始の栽培について考えられている方が多いようです。

農業生産法人の働き方改革を推進している大分県の生産法人(Hさん)では、年末年始はしっかり休む。

割れなどのロスが出ても、労働者が健康に作業して貰える事が法人としての在り方(幸福の実現)である、

という意見もありました。

 

げんき農場八街では、年末年始は、日中の天窓の開閉温度を1℃だけ下げる事を想定します。

前述の管理方法より管理温度の下げ幅は少なくなっています。

理由としては、光合成適温から下回ってしまう可能性があり、収量が減るリスクがあるからです。

成長そのものが、遅れる事も考えられます。色づきを遅らせつつ、リスクをできるだけ回避する為の折衷案と言えます。

これにより、年末年始の休暇期間中の色付きを抑えつつ、その後の栽培への影響が殆ど出ないようにしていく狙いです。

 

げんき農場八街の近況

11月は好天に恵まれ、樹勢もしっかりキープでき、現在着果しているものは、

ダブル花房で推移していますので、今後も暫くは収量がキープできそうです。

ちなみに花芽ですが、収穫40日前の環境に影響すると言われていますので、

40日前の気候、作物の状態を思い出す事で、

収量の予測がある程度できるかと思います。

実際に、関東地方では、10月の上旬に曇天が続き、温度差も大きく、

11月中旬までの収量が減り、げんき農場八街でも同じ傾向にありました。

その分、価格的に恵まれました。

10月中旬以降、天候が安定してからの収穫物が収穫できる11月後半以降、

収量が増大し、市場価格も低迷を始めました。

この事から、げんき農場でも暫くは収量が出ると思いますが、

市場価格は暫く、低迷するのではと思っています。

 

 

 

次号は、

①「灰色カビ病」の発生メカニズムと対策について

②低温時期の日中の環境制御について

以上の2つを書かせて頂きます。

 

 

 

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