極めるコラム

【渡辺パイプの営農通信】(いちご)羽生編 Vol.3

4月の取り組み

  • 日平均を低く抑える

今年の4月は例年になく、高温で推移しました。この為、ハウス内の日平均気温も高温で推移しました。

イチゴは品種にも寄りますが、日平均が20℃を超えると花芽分化を停止すると言われています。この為、5月下旬~6月までの収穫を考えている場合、この時期、出来るだけ低温での管理が重要となります。

げんき農場羽生では、4月下旬以降、湿度管理は諦め、午前中の早い段階で換気を開始するように設定しました。具体的には22℃で換気が開くように設定を行い、その後の温度上昇を緩やかにします。また、さらに温度上昇し、30℃を超える場合は11時頃より遮光をするようにしています。
げんき農場羽生では実施していませんが、日射量を見ながら、遮光することも一つの方法だと思います。

 

                               

  • アブラムシの発生

暖かくなると心配になるのはアブラムシの発生ですが、げんき農場羽生においても発生が確認され、さっそく農薬を散布しました。

アブラムシは花弁周辺に発生する事が多いですが、広がると葉柄やランナーにも広がっていくため、早めの農薬散布が必要です。

先月の営農通信において、ハウス周辺の草刈りを注意点として挙げていましたが、イチゴの収量が増える、葉の展開速度が速くなるなど、作業が増え、なかなか手を付ける事ができませんでした。来作の反省点です。

 

  • ケイ酸資材の利用(続報)

イチゴの軟化玉防止の為、2月後半から市販のケイ酸資材の利用を開始しました。ケイ酸資材は高濃度で利用すると軟化防止の効果が表れやすくなる一方で食味が悪化する事があります。この為、実際の栽培に合わせた利用が必要と考えます。収穫しやすい硬さ、食味が悪化しない観点から、濃度、投入間隔を変えながら施用を実施してきました。

以上のように原水タンクに投入しています。
メーカーの説明書では、1000倍1~2週間に1回となっています。

しかしながら、本圃場では食味の悪化が認められた為、濃度を下げて利用する事にしました。この事から、濃度を下げる必要性を感じました。

また、春先、生育速度が速くなるに従い、効果が出にくくなります。この事から投入頻度を変える必要性を考えました。
本圃場で行っている内容であり、実際には各生産現場で異なると思いますが、参考にして頂けると幸いです。

市販のケイ酸資材は高価な為、水稲用のケイ酸資材でも効果が見られるのか試験を実施していく予定にしています。

 

5月の管理の注意点

  • 炭疽病の発生に注意

炭疽病はいちご生産者にとって、もっとも厄介な病気です。羅病すると葉に褐色の斑点が現れる他、葉柄、ランナーには紡錘形の褐色斑点が生じます。末期には萎れが発生し、ひどい場合は枯死します。隣接する株に伝播し、同心円状に広がる特徴があります。30℃前後で発病し、水を介して媒介する事が知られています。5月は作の最終盤で最も高温になる時期です。また、本年は梅雨入りが早いと予想されていますので、5月後半にはかなり湿度が上昇する事も予想されます。

育苗期の対策ですが、

①頭上潅水しない

潅水時、頭上から潅水を行うと飛沫が飛び、羅病している株から菌が飛散し感染が広がる。

②羅病株からのランナーは利用しない。

ランナーを介して子株へ伝播するので、発病している株のランナーは利用しないのは勿論ですが、できれば、発病している株のあるハウスのランナーはできるだけ使わないようにする方が良いでしょう。

③器具の消毒

ハサミなどは羅病が認められなくても、こまめにアルコールなどで消毒する事でリスクが軽減できます。

④過繁茂にならないようにする

風通しが悪いと過湿になり、発病の要因になります。株を密にしない、葉を混ませないなどの工夫でリスク軽減できます。

⑤窒素過剰にならない管理

植物内の窒素含有量が増えると羅病しやすくなりますので、肥料濃度が濃くならないよう管理する必要があります。

葉の表面に斑点が生じます。他の病気との判別が難しいです。

 

葉柄、ランナー部分が褐色になり、紡錘形のくぼみを生じ、やがて萎れを生じます。

 

 

次回、6月号では、

栽培終期の注意ポイントを中心に配信させて頂きます。