極めるコラム

【渡辺パイプの営農通信】(いちご)羽生編 Vol.2

3月の取り組み

  • 晴天時の高温対策

げんき農場羽生(イチゴ)では、3月に入り、ハウス内が25℃を超える日が増えてきました。

特に9時前くらいから温度が急激に上昇する為、相対湿度が下がり、気孔が閉じる事による光合成量の減少が心配になります。

では、どうしていくか。

本圃場では小刻みに天窓換気を実施しています。

湿度が抜けてしまう事は止む得ない所ではありますが、開度を細かく調整する事により、急激な温度上昇を抑え、湿度の急激な低下を抑えます。

具体的には温度上昇を始める8:00から天窓の片側のみを利用します。

8:00~9:00  20℃設定 開度60%

9:00~9:30  21℃設定 開度80%

9:30~10:00  22℃設定 開度80%

10:00~10:30 23℃設定 開度100%

 

また、もう片側の天窓は25℃以上になると開くようにし、下がりきらない場合のバックアップとしました。

 

 

ただ、実際には、温度変化は少なくなったものの、予想以上に湿度の減少してしまいました。

今回の湿度が予想よりも低下した原因としては、天窓を中心に活用し、サイドを上手く使えなかった事に起因すると考えています。春の強風でサイド換気が上手く活用出来なった日もありますが、次作では、風下のサイド換気を上手く活用するなどの方法も検討したいと思います。

 

  • アザミウマ類の侵入

先月の営農通信では、3月の注意点として、アザミウマをお知らせしましたが、げんき農場羽生においてもアザミウマの侵入がありました。

埼玉県北部は2月後半より季節風が強くなり、その強風に乗って、害虫が侵入しやすい環境になります。

今回は2月26日に最初の発生を確認し、同じ埼玉県内では、かなり早い発生となりました。

その後の対応としては、

カウンター乳剤、ベネビアOD、ファインセーブを1週間ごとに散布。

しかしながら、十分な効果を得られず、最終的にはカスケードの散布でアザミウマの発生を抑える事ができました。

その後、農林振興センターとの意見交換の場で、薬剤抵抗性のアザミウマが近年すごく多いという事を知りました。「新しいハウスだから、発生した害虫は薬剤抵抗性を持っていないだろう」と思い込んでいましたが、野生種でも薬剤抵抗性はあるようです。

農薬選定に関しては、地元の農林振興センターの情報を活用する事もお勧めします。

 

  • ケイ酸資材の利用

イチゴの軟化防止の為に、ケイ酸資材を利用されている生産者も多いかと思います。

今回はげんき農場羽生での事例を紹介します。

今回利用したのは、市販の資材で、成分のメインは液体状のケイ酸資材です。

メーカー推奨は500~1000倍、1週間から2週間ごとの潅注と説明にはなっています。

2月後半より軟化傾向が現れた為、2/28より投入を開始しました。投入量ですが、原水2tタンクに1333ml(1500倍)を投入。メーカー推奨よりは薄いですが、タンク容量が大きい為、トータル量では多くなること、また食味が悪くなるという評判も聞いていた為、倍率を少し下げて様子を見る事にしました。

3/3ごろから、収穫時に実の硬さを実感できるようになり、3/5にはかなりしっかりした硬さに。

しかしながら、果実からは薬品のような臭いがしました。また、食感も良くない状態になりました。幸い、翌日には薬品臭も食感の悪さも改善されましたが、資材投入の難しさを実感致しました。

3/10頃には、再び軟化傾向が見られたので、再度、3000倍で投入を行いました。結果、3/12より硬さを実感でき、今回は薬品臭を感じる事もなく、また、完熟に近い状態での収穫が可能になったので、結果として味は良くなりました。

3/17に再度投入を実施し、同様に硬さを実感できたもの、軟化傾向が再び現れる速度が速くなった為、3/23に再投入。

再投入時には温度も高く、日平均が18℃まで上がる日もあり、これまでよりも硬さが出なくなりました。

この為、3/30に倍率を上げ、2500倍で投入しました。結果は3/17以前の硬さになり、食味の異変もありませんでした。

今回のことから、ケイ酸資材の利用に関して、一定間隔、一定濃度での施用よりも、栽培温度生育のスピードを見極めながら、濃度、投入間隔を変える事で、より有効に利用できることが分かりました。

硬さが増すことで、収穫のタイミングを遅らせる事が出来れば、それだけ甘いイチゴが収穫できることになりますので、弊社では生産に有用な情報と考えていますので、改めて、続報を配信させて頂きます。

 

4月の管理の注意点

 

  • CO2施用の時間帯に注意

4月は日の出から早い段階で高温になり、自動制御の温室では換気装置が働き、早いタイミングで外気を取り入れられます。

この際、CO2発生装置が作動していると、せっかく作成したCO2がハウス外に出てしまう為、換気を開始する前の施用が重要になります。

特に冬のままの設定になっている生産者の方も時々、見受けられますので、自動にされている方は改めて、設定を見直して下さい。

また、CO2は空気よりも比重が重いので、サイド換気よりも天窓で換気する事で、CO2が外に逃げる事を防ぐ事が出来るのですが、天窓換気は湿度も低下するので、全体のバランスを考えての換気が必要です。

げんき農場羽生では7時から8時でのCO2施用を実施しています。

 

 

 

  • アブラムシが発生するシーズンです。

アブラムシの生育適温は20~25℃であり、この条件下では7~10日サイクルで増殖します。

関東地区では4月中下旬ごろからハウス内で見られるようになりますが、ハウス外の雑草で越冬し、侵入してくることから、ハウス回りの除草を行う事で、侵入機会を減らす事が出来ます。

また、シルバーマルチを利用し、光を乱反射させる事で、飛翔を困難にさせる効果がありますので、通路にシルバーマルチを敷くことも有効です。また、土耕栽培向けにはなりますが、シルバーと透明の配色マルチを使うのも有効です。

(写真はシルバーの入った配色マルチ)

 

とはいえ、対策だけでは十分ではありませんので、この時期、新芽付近に侵入されていないかしっかりと観察し、早めの防除が重要です。